めでたく私と純が付き合えた日から、純は一日も欠かさずお見舞いに来てくれる。学校からここは四駅だから毎日となると申し訳なくなるが。

「ねぇ純。毎日来なくてもいいんだよ?」

「やだ。やっと付き合えたのに。それとも俺に飽きちゃった?あの主治医の方が大人でいい?」

この会話も毎日の日課になりつつある。

付き合ってすぐ、先生には伝えに行った。先生は純を見て、

「この子の事、よろしくね。」

純の肩をポンポンと叩いて微笑んだ。なんだか本当の父親みたいで嬉しかった。そんな私とは裏腹に、純は先生を見て少し拗ねた。先生が私とお似合いだからだと。機嫌を直してもらうのに時間がかかって大変だった。

「純の事、飽きる訳ないじゃん。好きだよ。」

「俺も桜の事好きー」

そう言って私を力強く抱きしめてくれた。最近は体調がものすごくいい。検査の結果も良好で、先生からは恋をしているからだとからかわれている。

このままいけば、治るかもしれない。純と一緒に歳をとれるかもしれない。私は期待するようになっていた。

「そうだ桜、渡したい物あるんだ。」

「んー?なにー」

「はい。」

渡されたのは別れた日に貰ったがすぐ返したブレスレットだった。相変わらず可愛いのだが、あの日の事が思い出されて心が苦しくなった。

「ごめんな、本当は桜に会いに来た時に渡せば良かったんだけど、俺持って来るの忘れてて。本当馬鹿だよなー...って、どうした?そんな泣きそうな顔して。」

「あの日の事思い出して。純には辛い思いさせちゃったなって。本当にごめんね。」

「いやいや、気にすんなって。桜は俺の為にあの選択をしてくれたんだから。それに今、こうして一緒に居れてるんだからいいじゃん。終わりよければすべてよしって言葉あるぐらいだし。」

純の笑顔を見て確かにと思った。辛い思いをさせたけど、今は一緒に居られる。ならいいのではないか。

「そうだね。純のおかげで心が軽くなったよ。ありがとう。」

「もしこのブレスレット見て辛い事を思い出すなら、俺が持っておこうか?」

「ううん、つける。思い出しても純の言葉思い出すから。」

「わかった。」

ブレスレットをつけると、金属特有の冷たさが気持ち良かった。明かりに反射してキラキラしている。

「やっぱり可愛い。ありがとう、純。大事にする。」

「喜んでもらえて良かった。」

その後は他愛もない会話をして時間を過ごした。もう本格的な冬が来ていて、外が暗くなるのが早い。