本当は純を押して離れた方がいいのだろう。だけどそんな事、私には出来なかった。

「純...私、純と一緒にいたい。純の事が好き。」

「俺も桜の事好きだよ。だから一緒にいようよ。俺、桜一筋だから安心してよ。」

そう言い優しく笑う純の姿に涙が出た。純はあんな酷い別れ方をした私をずっと想ってくれてた。それが嬉しくて、それと同時に私は結局、自分の事しか考えていなかったのだと思い知らされた。

「ごめんね、純。」

「謝らないで。桜の考えもわからない訳ではないから。」

「ありがとう。」

私は純の腰に手を回し、そして泣いた。純は何も言わずに抱きしめてくれてた。時折頭も撫でてくれて、涙は止まる事を知らなかった。


「ねぇ、純。」

涙も止まり、私はどうしても純に確認したい事があった。

「なに?」

「本当に私が彼女でいいの?あとどれぐらい生きれるかわからないんだよ?」

「いいに決まってるだろ。それも覚悟の上でここに来てるし、俺が桜を支えなかったら、誰が支えるの?」

「んー、先生とか?」

「ふざけんな。俺だけが桜の事支えていいに決まってんだろ。」

「でも先生いなかったら私、今生きてるかわかんないよ?」

「あーもー、つべこべ言うな。」

純は私の頬を掴むと喰うようなキスをした。初めての事で驚いた。

「ん...んー」

息が出来なくて肩を叩けば、やっと唇を離してくれた。

「はぁ、いきなりやめて。」

「桜が俺の事からかってくるからだよ。またやるならするけど。」

「もうからかわないからやめてください...」

顔を真っ赤にしながら言うと、純は満足気に笑った。前までは私と手を繋ぐだけで顔が真っ赤だったのに。

「わかればいいんだ。俺は本当に桜の事好きだし、嫉妬もかなりする。だからもう離さないからな。」

「ちょっ、苦しい。」

今までにない程の力で抱きしめられ、苦しかったがそれ程私の事を大事に想ってくれてるのだと思うと嬉しかった。

「純、しつこくてごめんね。本当に私でいいんだね?」

「いいよ。何度でも言ってあげる。俺は、桜以外考えられないよ。」

「これから病気が進行して、ベットから起き上がれなくなるかもしれないし、話も出来なくなるかも。」

「話が出来なくても、起き上がれなくても、それでも俺は桜と一緒にいたい。」

「私が死んでも、いつまでも悲しんでないでよ?」

「なるべく早く立ち直れるように頑張るよ。だから俺を桜の傍にいさせてください。」

真剣な瞳で訴えてくる純に嘘はない。だったら私が言う事は一つだ。

「残り少ない私の事、好きになってくれてありがとう。これから、よろしくね。」

口角を上げると、純は笑顔になった。そして目元には涙が浮かんでいた。あの日見た一筋の涙とは違う。この涙は見ていて辛くないから。

「俺の方こそよろしくな。」

私達は目を合わせると、軽くキスをした。

純は私にとっての太陽だ。暗い所にいた私を明るく照らしてくれた。どんなに突き放してもめげずに傍に来た。

そんな純の事が私は好きだ。もう病気だからって色々諦めるのはやめよう。治療ももう少し頑張ってみよう。純と一緒にいれる未来が少しでもあるなら、それに賭けてみよう。

「純、大好きだよ。」

「うん。俺も大好き。」