「...純はどうしてここに?私、病院の場所教えてないよね?それにもう会わないって言ったんだよ。もしかして忘れちゃった?」

「ここの場所は桜のおばあさんに聞き出した。俺、どうしても納得出来ないから今日、ここに来た。」

そう言う純の瞳は覚悟を決めていた。だめだよ、そんな瞳で見られたら私は純を離したくないと思ってしまう。

このままだと、綺麗な瞳に吸い込まれてしまう。私は下を向いた。

「納得も理解もしてくれなくていい。もう帰って。」

我ながらなんて酷い人なんだろう。純はこんな最低な私の元にまた来てくれたのに。でも今ここで純と一緒にいる道を選んでしまったら、純を悲しませてしまう。だったら今、ここで嫌われた方がお互いの為になる。

「帰らない。俺は桜に話があってここに来たから。」

だが純は私が作った壁を壊してくる。あんな別れ方をされて、どうして平気でいられるの?

「私は話なんてないし。もう顔も見たくない。だから帰ってよ!」

「さっきから下向いてるけど、それ、俺の顔見て言える?」

「...言えるよ。」

「だったら下向いてないで俺を見ろよ。それでもう一度同じ事言ってみろ。」

純に顎を掴まれ、強制的に目を合わせられた。怖い。本当は顔も見たくないなんて思ってない。純の顔を見て言えるはずないのに、どうして言えると言ってしまったのだろう。

「ほら、早く言え。言ったら帰るから。」

普段私に対して怒る事をしない純が怒っている。私が純を怒らせてしまった。純の優しさに甘えすぎてしまった。

「ごめんなさい...私が悪いです。許してください。」

いつの間にか怒っている純が母親と重なってしまい、泣きながら謝っていた。怖い。ごめんなさい。許して。頭の中は許してもらうことでいっぱいだった。

「桜、ごめんな。怖かったよな。」

やっと顎から手を離してくれたが、まだ純の事が母親に見えてしまい、怖い。純はあんな最低な人とは違うのに。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

「桜、もう謝らなくて大丈夫だよ。」

「全部私が悪いの。私がいるから周りの人は不幸になる。私なんて生まれなければ良かったんだ...!」

「桜!」

純の私を呼ぶ声で我に返った。純は私を力強く抱きしめた。

「そんな事言うな。俺は桜がいるから好きっていう感情が芽生えた。守りたいと思えた。離したくないと思えた。桜がいなかったらこんな事思えてない。」