「私、ずっと純に黙ってた事あるの。聞いてくれる?」

私は泣きながらも純の目をしっかり見て聞いた。純は戸惑いながらも頷いてくれた。

私は一回深呼吸をしてから話した。

「私、病気なの。それも難病であと半年しか生きれないの。夏休み中連絡出来なかったのは一週間、生死の境目にいたから。」

「嘘...だろ?」

私が一気に言うと、純は目を大きく見開いて驚いていた。それもそうだ。好きな人が、急に病気と言ってきたのだから。私が逆の立場だったら告白を断る為の嘘だと思ってしまう。

「本当だよ。今日外出するのも本当はダメだったの。でも主治医の先生がどうにか上の人を説得してくれて、だから私は今ここにいる。」

「そんな...」

純は信じられない、信じたくないとでも言いた気な表情で私を見ている。やめて、そんな顔で見ないで。これからもっと残酷な事を言うのだから。

「もしかしてだけど、今日で俺と会うの最後にしようとしてる...?」

純はなんでこんなに察しがいいのだろう。それが純のいい所であり、悪い所でもある。

「うん。」

「そんなのダメだ。俺は桜が病気でも好きな事は変わらない。」

純はそう言って私の事を抱きしめようとしたがさせなかった。拒絶された純は目を大きく開けている。

「その気持ちは嬉しいよ。でも考えてみてほしいの。あと半年しか一緒にいれない人といて、幸せになれる?私は幸せになれないと思う。悲しみが増えるだけだよ。」

「でも俺は桜と...」

「純、私純といる時すごく楽しかった。家族に酷い扱い受けてるのを忘れるぐらい。本当にありがとう。」

「桜、諦めるな。これから治療法が見つかるかも...」

「私が生きてる間には多分、見つからないよ。私の身体で治療法を探してるんだし。」

「そんなのわかんないだろ。まだ半年もあるんだ。俺も探すから...だから、そんな事言わないで...」

「純、もういいよ。自分の事は自分がよくわかってる。」

私は立ち上がり、荷物を持った。

「告白、すごく嬉しい。でもごめんね。付き合えない。だからこれも返すね。」

ブレスレットを純に返した。純は呆然とブレスレットを見ている。

「今日は本当に楽しかった。最後にいい思い出が出来て嬉しい。」

電車が来る音が聞こえる。もうお別れの時間が迫ってると焦った私はもう一度純の隣に座り、驚いて固まっている純にキスをした。

「幸せになってね。」

ちょうど電車が来て、純から逃げるように走り電車に乗った。そんなに長い距離じゃないから走っても問題ないだろう。

純は私を追って来たがあと一歩で扉が閉まってしまった。

電車が動き出し、ホームに立ち尽くしている純がどんどん小さくなって、やがて見えなくなった。

私はカバンからタオルを出して足を拭いて、靴を履いた。純、タオル持ってたかな。二つ持って来ていたのだから一つ置いてくれば良かった。元々一つは純に渡す予定だった。あんなに早く話を切り出されるとは思っていなかったから渡せなかった。最初から行き先を伝えておけば良かったかな。

もう後悔しても遅いのだけれど。

行きは二人で乗った電車を、帰りは一人で乗っている。自分で決めた事なのにそれがとても悲しかった。つくづく私は勝手だ。

「純...ごめんね...」