「純も早くおいでー」

「待って、砂浜熱くね?」

「大丈夫、気のせいだよー」

「な訳あるか!めっちゃ熱いわ!」

熱い熱いと言いながら私の隣まで来た。足が海に浸かっているから気持ちいいのか、熱いと言わなくなった。

「ほら純、折角ここまで来たんだから遊ばなきゃ。」

「遊ぶって...うわっ!」

「へへ、ぼーっとしてるのが悪い!」

私は手を海水につけて思いっきり純にかけた。純の全身はびしょ濡れだ。

「やったな!このやろー」

「きゃー!」

純も私に水をかけてきて、お互いびしょ濡れになった。だから歯止めが効かなくなり、身体が海水で重くなるまでかけあった。それが楽しくて、この時間が終わってしまうのが怖かった。

「はぁ...少し休憩しよ。」

「そうだな。めっちゃ疲れた。」

私達は荷物を置いて来た所に戻り、転がった。真夏の太陽が焼きつけてきて暑かったが、これも青春だなぁと思った。

「なぁ桜。」

転がっていつ話しを切り出そうか考えていると、いつの間に起き上がった純が私の名を呼んだ。その声は真剣で、ああもう楽しい時間は終わりだなと直感した。だから私も起き上がった。

「何?純。」

「俺、桜がいつもと違う事気づいてるよ。でも桜が言ってほしくなさそうだったから言わなかった。...俺が言おうとしてる事にも影響ありそうな気がしたから。」

「これから言おうとしてる事...?」

純はカバンから紙袋を出し、中身を出すとすぐ私の腕につけた。

「え...これ...」

腕につけられたのは先程の店で買うのを断念したブレスレットだった。

「もう気づいてるかもだけど、桜、俺、桜の事好きだ。ずっと大事にするって約束する。だから付き合ってくれないか?」

...ああ、言われてしまった。私が先に病気の事言わなければいけなかったのに。純はどれほど勇気を出して告白してくれたのだろう。

私だって純の事好きだよ。でもね、付き合う訳にいかないの。私は病気だから。純と一緒に歳をとっていく事が出来ないから。

「あ...急で驚いたよな。ごめんな、返事は急がないから。ゆっくり考えてくれたらいいよ。」

純は何も言わない私を返事に困っていると思ったのだろう。違う、違うの。だからそんな顔しないで...。

「桜...?泣いてるの?ごめんな、俺がこんな事言ったから...」

「違う...」

「え?」