「そうかな?俺はこれ、桜に似合うと思うよ。いや、桜にしか似合わない。」

純にそう言われて心が揺らいだが、首を横に振った。いくら楽しんでいたいとはいえ、これは買えない。

「私、外出て待ってるね。」

「あ...桜...」

純が呼び止めだが気にせず、店を出た。店を出ると賑わっていて、この世界に戻って来た気がした。

「お待たせ。」

純はすぐにお店を出て来た。その左手には時計がついている。

「時計、似合ってるよ。」

「ありがとな。桜のおかげでやっと決められたよ。」

「それは良かった。」

「次はどこ行くの?

「次の場所は着いてからのお楽しみ。さ、行くよ。」

「はいはい。」

再び手を繋いだ私達はショッピングモールを出た。外は暑くて駅に向かうだけで首から汗が垂れていた。

「外は暑いな。」

「ね。この中外で部活する人達すごいと思う。」

「そう言う桜も中学の時、部活やってたじゃん。」

「ああ、そういえばそうだね。」

中学の時にやっていたバドミントンを思い出す。だがいい思い出なんて一つもない。部内では私一人浮いていて、なぜかいじめられていた。引退試合前日に道具を壊され、引退試合に出れなかった。別に絶対出たい試合ではなかったが、ここまでやったのだから出ないと示しがつかないと壊された道具を抱きしめて泣いたのを覚えている。あの時の事を思い出すと胸が痛むが、過ぎ去った事だ。もうどうでもいい。

「俺、高校でも桜、バドミントンやると思ってたからやらないって言われた時はすごく驚いたよ。」

電車が来るのをベンチに座って待つ。私の想像していた青春だ。

「飽きてたし、バイトも始めたからさ。」

「桜、バイトしてるの?」

「あれ、言ってなかったっけ。私、コンビニでバイトしてたんだよ。もう辞めちゃったけどね。」

「なんで辞めちゃったの?」

「ちょっと色々あって。あ、この電車に乗るよ。」

タイミング良く電車が来てくれた。純は本気で怪しんでいる表情をしていたが気にしない。まだ言う時ではない。

いつも乗る電車と反対の方...病院方面に向かう電車に乗った。行き先は病院よりもっと先だが。

「そういえば純って門限とかあるの?」

病院方面の電車は人が少なくて、隣同士で座れた。

「遅くなりすぎなければ平気。これから行く所、そんなに遠いの?」

「そうでもないよ。ただ気になっただけ。」

「そう...」