純は言いたいだけ言うと、自分の席に戻って行った。純だけは私にありがとうと言ってくれる。細かい所にも気づいてくれる。感謝をし慣れていない私にはとても嬉しい事で少し心がほっこりした。

二時間目も終わり、あっと言う間にお昼休みになった。私は昨日の夜ご飯を詰めたお弁当を食べた。まだ一人で食べている人も多く安心した。だけどこれから皆は気の合う人を見つけて、一人で食べる人なんて数人しかいなくなるだろう。それが少し羨ましくも感じた。私は感情を押し殺してきたせいか、笑えない。だから誰も私に話し掛けてこないし私からも極力話し掛けない。純は別だけれど。

お昼を食べ終え、近くの手洗い場の個室に籠った。静かな所で一人になるのが好きな私に手洗い場は最適な場所だ。私がいる事で一つ埋まってしまうが許して欲しい。

何かするでもなくボーッとしているとチャイムが鳴った。またあのうるさい所に戻ると思うと心が重たかったが授業に出ないといけないから戻った。

「あ、桜。途中まで一緒に行こうぜ。」

歩いていると純に声を掛けられた。純はお弁当が入った袋を持っているが周りには誰もいない。人気者の純のことだから、先輩と食べたのかもしれない。

「勝手にすれば。」

我ながら冷たい態度だと思う。それでも純はついてきた。

「桜は部活何入る予定?」

「入らない。」

「なんで?中学までバドミントン頑張ってたのに。」

「...飽きちゃったから。もう教室近づいてるから。じゃあ。」

「あ...」

純から逃げるように教室に入った。同じクラスだが、席が離れているから純の事は見えない。純からも私が見えないからラッキーだ。今見られたら完全に嘘がバレてしまうから。

バドミントンが飽きたというのは嘘。本当は今でも好きだし、部活もやりたい。だが中学の時に使っていた道具は全て壊れてしまった。新しく買い直すお金もないし、なにより弟と比べられるのが嫌だった。

弟は私より一年遅く始めたが、私より遥かに上手い。大会でも結果を残す程。私はどれだけ練習しても結果がついてこなかった。

好きだから上手くなる訳ではない。そう言われている気がして辞めた。これからバイトをするし、丁度良かったのだ。

心にそう言い聞かせて授業に取り組んだ。