改札を抜け、学校方面のホームに行くと人でごった返していた。夏休み中だから仕方ない。

満員電車に乗り、少し押しつぶされながら学校の最寄り駅に着いた。約一ヶ月ぶりの地元はやはり落ち着く。

学校に近づくにつれ、鼓動が早くなるのがわかる。純に会える。あの声が聞ける。それが楽しみで嬉しくて、歩を早めた。走るのは先生にダメと言われている。

校門が見え、そこに男性が立っているのが見えた。間違いない。純だ。私はもっと歩を早め、純に抱きついた。

「うおっ、桜!?」

私が抱きつくなんて思っていなかったのだろう。凄く驚いている純は見ているだけで面白い。

「久しぶり。元気にしてた?」

「元気が有り余ってるよ。てか桜、どうして連絡くれなかったんだよ。」

「ごめんね。後で話すよ。それより学校行こっ」

「ああ、うん。」

純はいつもの私と何か違うと少し眉をひそめていたが見なかった事にする。今は純と会えた嬉しさだけを噛み締めていたい。

夏休み中の学校は静かだった。外では部活をやっているが、中には誰もいない。それが特別な気がして楽しい。

「どこ行きたいの?」

「私達のクラス。」

ちょうどクラスに着き、入ると当然だがなにも変わっていなかった。私は治療に専念する為、夏休み明けには学校に来ない。だから今日が最後だ。最後に純と学校に来れて良かった。ここには、沢山の純との思い出があるから。当の本人は私が夏休み明け、学校に来ないなんて夢にも思っていないだろう。

「久しぶりにこの教室に入ったけど、何も変わってないな。」

「そうだね。先生達も学校に来てないのかな?」

「そうかもな。」

私達は何を言うでもなく席に着いた。周りの人がいない今、純と私は離れすぎているのがわかって嫌だった。

「純、遠いからこっち来て。」

「やだよ。そっち窓際で暑いし。」

「仕方ないな、私が行くよ。」

純の隣の席を借りて座ると、少し緊張した。もし席が隣同士だったらこんな気持ちだったのかな。

「そういえば桜、今日半袖のブラウスなんだな。」

「うん。暑いから。」

「腕見せて。」

言われた通り見せる。薄くはなったが傷跡が沢山ある。

「気持ち悪くないの?こんな傷跡だらけの腕なんて。」

「これは桜が頑張った証だから。そんな事思わないよ。」

「そっか。ありがとう。」

今日半袖を着たのは、もうこの傷跡を隠す必要がないから。今日もしクラスの人達に出くわしたとしても、夏休み明けに私は学校に来ないから何と思われようが、言われようがどうでもいい。それに長袖は暑くて着れたものじゃない。