「ちなみになんだけどさ、どこに行くつもりなの?」

「海。でもその前に高校生らしい事するつもり。」

「そっか。無理さえしなかったら何しても平気だから。」

「わかった。ありがとう。」

先生は出かける相手を聞いてこなかった。まあ私が一緒に出かける相手なんて一人しかいない。

「日にちは決まったら教えてくれたらいいよ。さて、先生は帰りますか。」

先生は軽く伸びをすると私の頭を撫でた。そんな幼くないのにと思ったが、先生からしたら私は幼いのかと思い直し、何も言わなかった。

「先生、外暗いから気をつけてね。今日もありがとう。」

「こちらこそありがとう。じゃあまたね。今日もよく頑張りました。」

先生はドアを開けようとして、何を思い出したのかこちらを振り返った。

「田辺さん、後悔しないようにね。」

そう言い残し病室を出て行った。一人残された私はスマホを開いた。時刻は午後八時で、就寝時間まであと二時間ある。

トークアプリで純の所にいき、何度も確認しながら打った文章を送った。

─久しぶり。連絡出来なくてごめんね。いきなりなんだけど、来週どこか空いてる?一緒に出かけよう。─

送った後はすぐスマホを閉じて毛布にくるまった。あの文、変じゃないかな。今更って思われないかな。

ピコン。通知を知らせる音が鳴った。待っている時間は長く感じたが、実際は五分程度だ。恐る恐る通知を開くと、やはり純からの返事だった。

─久しぶり!メッセージ送っても電話しても出ないから心配したんだからな!─

─来週ならいつでも空いてるよ。─

続けざまに送られてきた。すぐ既読をつけてしまったがもういい。不可抗力だ。

─なら土曜日の朝十時に学校で待ち合わせしよ。制服着て来て。─

すぐさま既読がつき、返事を待っていたのかなと思うと可愛くて口角が上がった。

─わかった。めっちゃ楽しみ。─

分とともにスタンプが送られてきた。制服を着る理由を聞かれたり、そもそも出かけるのを断られなくて良かった。