祖母の口から純の名前が出てくるとは思わなかったから久々に大きな声が出た。でもなんで純が祖母の家に?
「あら、知り合い?」
祖母は私の反応に少し驚いていた。私が大きな声を出す事がないからだろう。
「うん。幼なじみ。」
「そうだったのね。とても良い子だったわよ。」
「純はなんでおばあちゃん家に来たの?私教えてないよ。」
「桜の家に行ったら、私の家にいるって言われたみたいよ。遠い所まで来るなんて、よっぽど桜の事を好いてるのね。」
祖母は嬉しそうにしていた。思えば祖母に好きな人や友達の事を話した事がない。と言っても友達なんて出来た事ないのだけれど。
「純、なんて言ってた?」
「連絡が欲しいって言ってた。桜、純君には病気の事話しても平気だと思うわ。きっと受け止めてくれる。」
「おばあちゃんからは病気の事話してないの?」
「話してないよ。桜には桜の考えがあると思ったから。大丈夫よ。上手く誤魔化しといたから。」
「ありがとう。」
さすが私より長く生きているだけある。あの一回気になったら納得するまで粘る純を納得させるなんて。私はいつもこれ以上聞かないでという気持ちを顔に出しているから納得させているだけだ。これを納得と言うのかわからないけれど。
「純君、すごく心配してたわ。夏休みの課題、一つも手つけてないみたいよ。」
「おばあちゃん、それはいつもの事だから大丈夫。」
「そうなのね。とりあえず、何かしらの連絡はした方がいいわ。」
「そうだね。」
「田辺さん、治療の時間だよ。」
話がちょうど終わった時に先生が入って来た。祖母は先生に頭を下げて病室を出て行った。
「お願いします。」
「こちらこそお願いします。治療の間、寝てていいからね。」
「うん...」
注射を打たれるとすぐ眠りについた。
夢を見た。純と海に行っている夢だ。夢の中では私が二人いて、純と一緒にいる私とその二人を客観的に見ている私。多分、私の考えている事がそのまま夢に出て、理想と現実の両方を見せているのだろう。夢でも神は残酷だ。もしかしたら私には神というものが存在しないのかもしれない。
「純、海綺麗だね。」
いつもの夢は声なんて聞こえないで楽しそうな姿だけなのに。今回ははっきりと私の声が聞こえる。視線を二人に向けると、楽しそうに笑っていた。
「ああ、そうだな。」
「それで、話って何?」
理想の私がそう聞くと、純は真面目な顔で理想の私に向き直った。理想の私はこれから何を言われるのかわかるのか、笑顔で待っている。私って、人を愛おしそうに見る事出来るんだ。
「俺、ずっと桜の事好きだったんだ。どんな辛い事でも我慢する所も心配だけど好きなんだ。だから俺と付き合ってほしい。」
気づいたら私は泣いていた。だってこれは所詮、夢だ。
理想の私は恥ずかしそうに純の手に触れた。違うよ。本当の私は病気で、半年しか生きれないんだよ。だからそんな幸せそうな顔しないでよ。
そう言っても理想の私には聞こえない。所詮は夢だから、現実の私の声なんていらないのだ。
「純...私を救ってくれてありがとう。こんな私で本当にいいの?」
「俺はどんな桜でも受け止めるよ。」
二人はどちらからでもなく自然にキスをした。その姿は私の心を壊すのに充分だった。現実ではこんな事起こらないのに、どうして見せつけてくるのよ。夢でぐらい、現実の私を楽しませてよ。
「純...助けてよ...会いたいよ...」
そう呟いた瞬間、身体が重くなった。こうなる時は夢から覚める時だ。良かった。これ以上幸せな姿を見なくて済む...。
「あら、知り合い?」
祖母は私の反応に少し驚いていた。私が大きな声を出す事がないからだろう。
「うん。幼なじみ。」
「そうだったのね。とても良い子だったわよ。」
「純はなんでおばあちゃん家に来たの?私教えてないよ。」
「桜の家に行ったら、私の家にいるって言われたみたいよ。遠い所まで来るなんて、よっぽど桜の事を好いてるのね。」
祖母は嬉しそうにしていた。思えば祖母に好きな人や友達の事を話した事がない。と言っても友達なんて出来た事ないのだけれど。
「純、なんて言ってた?」
「連絡が欲しいって言ってた。桜、純君には病気の事話しても平気だと思うわ。きっと受け止めてくれる。」
「おばあちゃんからは病気の事話してないの?」
「話してないよ。桜には桜の考えがあると思ったから。大丈夫よ。上手く誤魔化しといたから。」
「ありがとう。」
さすが私より長く生きているだけある。あの一回気になったら納得するまで粘る純を納得させるなんて。私はいつもこれ以上聞かないでという気持ちを顔に出しているから納得させているだけだ。これを納得と言うのかわからないけれど。
「純君、すごく心配してたわ。夏休みの課題、一つも手つけてないみたいよ。」
「おばあちゃん、それはいつもの事だから大丈夫。」
「そうなのね。とりあえず、何かしらの連絡はした方がいいわ。」
「そうだね。」
「田辺さん、治療の時間だよ。」
話がちょうど終わった時に先生が入って来た。祖母は先生に頭を下げて病室を出て行った。
「お願いします。」
「こちらこそお願いします。治療の間、寝てていいからね。」
「うん...」
注射を打たれるとすぐ眠りについた。
夢を見た。純と海に行っている夢だ。夢の中では私が二人いて、純と一緒にいる私とその二人を客観的に見ている私。多分、私の考えている事がそのまま夢に出て、理想と現実の両方を見せているのだろう。夢でも神は残酷だ。もしかしたら私には神というものが存在しないのかもしれない。
「純、海綺麗だね。」
いつもの夢は声なんて聞こえないで楽しそうな姿だけなのに。今回ははっきりと私の声が聞こえる。視線を二人に向けると、楽しそうに笑っていた。
「ああ、そうだな。」
「それで、話って何?」
理想の私がそう聞くと、純は真面目な顔で理想の私に向き直った。理想の私はこれから何を言われるのかわかるのか、笑顔で待っている。私って、人を愛おしそうに見る事出来るんだ。
「俺、ずっと桜の事好きだったんだ。どんな辛い事でも我慢する所も心配だけど好きなんだ。だから俺と付き合ってほしい。」
気づいたら私は泣いていた。だってこれは所詮、夢だ。
理想の私は恥ずかしそうに純の手に触れた。違うよ。本当の私は病気で、半年しか生きれないんだよ。だからそんな幸せそうな顔しないでよ。
そう言っても理想の私には聞こえない。所詮は夢だから、現実の私の声なんていらないのだ。
「純...私を救ってくれてありがとう。こんな私で本当にいいの?」
「俺はどんな桜でも受け止めるよ。」
二人はどちらからでもなく自然にキスをした。その姿は私の心を壊すのに充分だった。現実ではこんな事起こらないのに、どうして見せつけてくるのよ。夢でぐらい、現実の私を楽しませてよ。
「純...助けてよ...会いたいよ...」
そう呟いた瞬間、身体が重くなった。こうなる時は夢から覚める時だ。良かった。これ以上幸せな姿を見なくて済む...。