「田辺さん。調子はどう?」

治療をすると決めてから一週間が経った。色んな検査をされ、薬を投与してあっという間に一日が終わる。同級生は今頃、青春を謳歌しているのだろう。

「だるい...」

「少しだけ診察させてね。寝たままでいいから。」

「うん...」

疲れたからか、薬の副作用か。ずっと身体がだるい。起き上がれない。おまけに眠い。

「うん。心音も大丈夫そうだ。今日は午後から治療だから寝てなよ。」

「そうする...おやすみ。」

布団をかけ直し、私は眠りについた。

夢にはいつも純が出てきて、私に大丈夫と言ってくれる。多分、私が言ってほしいと思っているから出てくるのだろう。夢の純すら優しくて涙が出てくる。

「ん...」

目が覚めると太陽が眩しくて目を細めた。棚の上にある時計を見ると、十一時と表示されていた。治療開始まで一時間ある。

もう一度寝ようと体勢を変えると、枕が濡れている事に気がついた。まさかと思い目元を触ると泣いていた。夢で泣いて、現実でも泣くなんて。これも優しすぎる純が悪いと理不尽な事を考えて、一人可笑しくなって笑った。

「桜、起きてるの?」

する事もなくぼーっと天井を見つめていると、祖母が病室に入って来た。

「うん。今起きた。」

「そう。なんか桜と話すの久しぶりだわ。来るといつも寝てるから...」

「ごめんね。起きてられなくて...」

「いいのよ、気にしなくて。体調はどうかしら。」

「だるい。」

「薬の副作用かしらね。辛いね。私が代われるなら代わるのに...」

祖母は私が母親に見捨てられたのを知り、すぐ謝りに来てくれた。祖母は私の病気の事を話したら私に対する母親の態度が変わってくれるかもしれないと思い、話したみたいだ。

私は祖母に謝られて、困った。祖母は私の事を考えて話す決断をしてくれたのだ。怒る訳ない。まあ今までの私なら余計な事をと怒っていただろうが、今はそんな事微塵も思わない。

私の事を考えてくれた。結果はどうであれ、その気持ちが嬉しかった。私にもまだ大事にしてくれる身内がいるんだって実感出来たから。

「その気持ちが嬉しいよ。ありがとう。おばあちゃんも思い詰めないでね。私が言える立場じゃないんだけど。」

苦笑いを浮かべながら言うと、祖母も少し笑った。

「桜は優しいね。ありがとう。あ、そうそう。伝えなきゃいけない事あって。」

「どうしたの?」

「この間うちに男の子が来たわよ。確か...純って言ったかな。」

「え!?」