高校の入学式が終わった次の日。クラスでは係や委員決めが行われていた。だか...

「皆?決めないと放課後も残ることになるよー」

クラスメイトは一向に手を挙げない。昨日入学したばかりで、緊張しているのだろう。その気持ちはわからないでもないが決めなければいけないのだ。

クラス中を見渡し、手を挙げる気配がないことを確認し、私は手を挙げた。

「私、図書委員やります。」

クラス中の視線を感じたが気にしない。悪い事をしている訳ではないし、これ以上先生を困らせたくなかった。

「田辺さんありがとう。他に図書委員やりたい人いる?」

誰の反応もなく私は図書委員に決まった。

「はーい、俺、学級委員やるー」

そう言って手を挙げたのは幼なじみの今野純だった。純は人をまとめるのが得意だから最適だろう。

「じゃあ今野くん、お願いね。」

「はーい」

純を学級委員に決めると先生は教室を出て行った。後は生徒同士で決めろということだろう。まあ純が学級委員なら大丈夫だろう。

「さー、早く決めて自由時間にしようぜ。まずは副委員長だな。」

純は黒板の前に立ち、元気よく言った。するとクラスメイトは次々と手を挙げて立候補して。さすが純だ。もし私があそこに立ったとしても誰も手を挙げなかっただろう。

「おし、全部決まったな。皆やれば出来んじゃん。いや、俺のおかげだな。」

純が黒板の前に立って五分。全ての委員会と係が決まった。

「今野、自分で言ったら折角かっこよかったのに台無しだよー」

一人の女子がそう言うと、教室は笑いに包まれた。先生がいた時の雰囲気とは全くの別物だ。本当に純は凄い。

「んじゃあ俺、決まったこと先生に伝えて来るわ。大人しくしとけよー?」

「言われなくてもするわ!」

誰かのツッコミで、再び教室は笑いに包まれた。それがうるさくて、窓の方を向いた。

一時間目が終わり、二時間目の準備をしていると誰かが私の前に来た。

「桜。」

名前を呼ばれて上を向くと、純が立っていた。

「何?」

「さっきはありがとう。皆が手を挙げないから挙げてくれたんだよな。」

準備していた手をが止まった。まさかバレていたなんて。長年一緒にいるだけではないみたいだ。

「うん。」

「そのおかげで皆決められたからお礼言いたくて。」

「決めたのは純じゃん。私は自分の事しか決めてない。」

「それでも手を挙げてくれたから俺も挙げやすくなった。ありがとう。それじゃあ。」