その日から三日後。ベットの縁に腰をかけぼーっと外を見ていてふと気になった。純はどうしているのだろうって。夏休みに入って二週目に突入したが私がこうなってしまったせいで一度も連絡をとっていない。

心配しすぎて私の家に行っていたら困る。純には夏休み中、祖母の家にいる事を伝えていない。伝えようとした時に意識を失ってしまったから仕方ない所はある。

スマホあるかなと棚の引き出しを開けると充電器とスマホが入っていた。祖母が入れてくれたのだろう。私は基本、人に自分の持ち物がバレないように生活している。あの家族に大事な物を壊されたらたまったものじゃないから。それなのに棚には財布と私のカバンに入っていた物が全て棚に入っていた。祖母は私が起きた時に不安にならないように入れてくれたのだろう。その優しさが心に染みた。

二週間使っていなかったからか、電源が落ちていた。充電器に刺しながら電源をつけると、案の定純から沢山の連絡がきていた。着信もきていて、よほど心配させてしまったのがひしひしと伝わってくる。

メッセージ一つ一つ見て、返事をしようとして手を止めた。こんなに期間を空けて、なんて言うの?病気の事は絶対に言わない。言うつもりもない。だとしたらなんて言い訳するの?祖母の家に泊まる事は言ったとしても二週間連絡出来なかったのはなんて言うの?仮に今、上手く誤魔化せたとしてもこれからは?私はあと半年しか生きれない。そんな身体で学校に行っても無駄だから辞めるつもりだ。そうなったら純はますます不審がるだろう。だったら予定通り、純と一緒にいるのをやめた方がお互いのためになる。でも一緒にいるのをやめるにしても、一言あった方がいいだろう。

結論は出たが一言なんて言っていいかわからず、手は止まったままだ。どうしたら純は納得してくれる?

考えれば考える程わからなくなって時間ばかりが過ぎる。

すると病室のドアが勢いよく開いた。この病室に来る人なんて祖母か先生ぐらいしかいない。でもこの二人はこんな勢いよくドアを開けたりしない。

「久しぶりね、桜。」

その声でやっとドアの方を見る事が出来た。見なくてもわかるが、人間というのは声がした方を見てしまうものだ。

「お母...さん」

病室に入ってきたのはそう、母親だったのだ。なんで母親がここに?て事は...

「あなた、病気なんだって?それも治らない難病。」

やっぱり、病気の事を知られてしまったのだ。でも誰が病気の事を言ったの?先生と祖母しか知らないはずなのに。

「私の母が昨日家に来て、桜が病気であと半年しか生きれないって言いに来たの。だから桜の事もっと大事にしろって。本当なの?」

顔に出ていたのか、母親はすんなり教えてくれた。でもその表情に心配は一切感じられない。むしろ怒りの方が伝わってくる。