「ん...」

次に目を開けたら白い光が目に入った。眩しくて横を向けば先生が椅子に座って膝にパソコンを置き仕事をしていた。

「先生...?」

私が声をかけると先生は泣きそうになっていた。

「良かった...目を覚ましてくれて...」

「私、あれからどうなったの?」

「意識を失って、今まで一度も起きなかったんだよ。すぐ処置はしたから今日一日入院したら大丈夫だよ。」

「そうだったんだ...ありがとう。」

先生は私を処置した後すぐ祖母に連絡したらしい。祖母は先生に今日は仕事で来れないが、両親には上手く伝えるからゆっくり休んでと私に言うよう伝言を頼んだらしい。

「おばあちゃんに心配かけちゃった...」

「今回のは発作じゃない。お祖母様にもそう伝えてあるから大丈夫。点滴が合わなくて倒れてしまったんだ。だからこちらに比がある。辛い思いさせてごめんな。」

「そうだったんだ。でも先生が謝る事じゃないよ。私、先生がこの病気治すのに必死な事知ってるし。」 

「ありがとう。」

先生は私の頭を撫でた。父親に頭を撫でられた事のない私にはお父さんに撫でられてるみたいでとても嬉しかった。

「あ、スマホ...」

ふと、スマホの行方が気になった。倒れた衝撃でどこかにいってしまったから。純に返信していないから心配しているだろう。

「スマホならここだよ。はい。」

先生に渡され、やっと手元に返ってきたスマホ。割れてもなければキズ一つもなかった。

「良かった。ありがとう。」

純に返信をしようと電源をつけると驚いた。点滴を打っていた時間から三時間も経っていたから。

「私、三時間も眠ってたの?」

「そうだよ。処置したからすぐ目を覚ますと思ってたから心配で。無理言ってここに居させてもらった。」

「そうだったんだね...」

もしこのまま目覚めなかったらと思うとゾッとする。

「あ、そうそう。スマホ拾った時に見えたんだけど純って誰?」

先生が聞くのもおかしくない。私は今まで誰かとやりとりする事なんてなかったし、純の事を話した事もない。

「幼なじみ。」

「男?」

「うん。」

「田辺さんに男友達がいたなんて。先生だけかと思ってた。」

先生はショックを受けていた。その姿が面白かった。

「ふふ。でも純には病気の事話してないから先生のが上だよ。」

軽い感じで言ったら、先生は少し怒った。

「言ってないの?言わないとダメじゃないか。もし今後その子の前で発作が出た時どうするの?」

「誤魔化すし、それに多分、発作が起きる程酷くなるまで一緒にいない。」

私は純といる期間をなんとなくだが決めていた。それは自分の病気が酷くなる直前まで。もし酷くなって誤魔化しがきかなくなったら、純に病気の事を説明しないといけなくなる。それだけは嫌だった。これ以上、純の負担になりたくない。

それに病気の進行を調べる為に毎月病院に通っているのだ。酷くなる前に先生も言ってくれるだろう。