「こうやればいいのか。さすが桜だな〜」

「ある程度勉強出来ないと色々面倒臭いから。」

「桜は偉いな。俺だったら反抗しまくってると思う。」

「反抗しまくったら今より扱い酷くなるからさ。」

「でも無理はするなよ。辛かったらすぐ俺に言えよ。」

「ありがとう。」

こんなに私の事を気にかけてくれる純に病気の事を秘密にしているのが心苦しかった。だけどこれ以上心配かける訳にはいかない。この事は墓場までもっていく予定だ。

「あ、桜時間大丈夫なの?」

純がスマホの時計を見せてきた。今日は月に一回の検査の日だ。純には用事があると濁して言ってある。

「もう行かなきゃ。」

「駅まで一緒に行くよ。」

「ありがと。」

断ろうか迷ったが、断って怪しまれても嫌だから頷いた。純は机の上にある物をカバンに押し込んで立ち上がった。

「準備終わった。行くか。」

「そんなに早くて忘れ物ないの?」

「ないよ。仮にあっても困らないし。」

「だから頭悪いんだよ。」

「桜さんひどーい。俺泣いちゃう。」

「純が泣いても私は困らないから。」

「なんだよ〜」

純と居ると笑顔を忘れていたはずなのに笑顔になれる。一緒にいる時だけはなんでも忘れられる。だからこそ、いつか離れるのが怖くなる。病名を言われた時はそんな事微塵も思わなかったのに。

「じゃあまたな。気をつけて行けよ〜」

改札を抜け、純と別れた。病院はいつも乗る電車と反対方向だから。ちなみに家には祖母の家に寄ると言ってある。

各停の電車に乗り、四つ行った所にかかりつけの病院がある。結構大きな病院で何年も通院しているのに一向に慣れない。

病院に入り受付の人に診察券を出して待つ事十分。

「田辺さん。」

ずっと私の事を診てくれてる先生が私の目の前にきて呼びに来た。この先生は有名な先生らしく、いつも視線が凄い。

「先生。こんにちは。」

「こんにちは。体調はどう?」

「今日はすごぶるいいよ。」

「それは良かった。さ、行くよ。」

「はーい」

少し大きめな診察室にいつも通される。そこで全ての検査が出来るようにらしい。検査と言っても簡単な問診と血液検査、この病気の治療法を見つける為の薬を身体に入れたりする。要は実験台だ。実験台になっても、私が生きている間に治療法が見つかる事は多分ないのに。

「うん。今日は体調良さそうだね。じゃあこの点滴してみてくれるかなって...田辺さんどうしたの?」