「桜、大丈夫か?」

純は私の心配をしてくれた。あんなに態度を悪くしてたのに。嬉しさと気まずさが混ざりよくわからない感情になっている。

「どうしてそんな子がいいの?」

リーダー格の女子が肩を震わせながら純に詰め寄った。純は動じる事なく答えた。

「お前達みたいな一人じゃ何も出来ない奴と違うからだよ。わかったら早く消えろ。」

「...なによ!行こっ」

女子達は顔を真っ赤にして教室を出て行った。女子達の姿が見えなくなると純は私を抱きしめた。力が強くて、息が出来ない。

「ちょっと、力強い。離して。」

「やだ。離したら桜、逃げるだろ。」

「いいから離して。もう帰るから。」

なんとか離れ、カバンを持って立ち上がった。だが殴られたり貧血気味だったりしてよろついてしまった。

「いきなり立ったら危ないだろ。俺が支える...」

「大丈夫。一人で帰れるから。じゃあ。」

早足で教室を出ようとしたら、抱き上げられた。急に見ている景色が高くなったから一瞬目眩がした。

「どうしていじめられてる事俺に言わなかったの?」

これは逃げられない。観念した私は抵抗をやめた。

「言う程の事じゃないから。」

「言う程の事だろ。今日はたまたま俺が来たから良かったけど、来なかったらあいつらに殴られてたよ。」

「別にそれでもいい。どうせ私なんてそんなもんだよ。」

「そんな事言うな、俺は...」

「うるさい!純には関係ないでしょ。私の事情なんにも知らないのに口出してこないで!」

涙が出ているのがわかる。何に泣いているのかわからない。だけど一つだけわかるのは、もう心が限界だってこと。

「どうしたんだよ。」

純は急に泣きだした私に少し驚いているようだった。どうしたと言われても私の方が知りたい。

「うるさい。降ろして。」

「やだ。理由聞くまで降ろさない。」

だったら私も手段を選ばない。足をバタつかせ、純の力が緩んだ時に離れようとしたがあと一歩の所で純に止められた。だがこのままでは危ないと思ったのか床に降ろしてくれた。

「どうした。桜がそんなに泣くって相当の事だろ。話してくれないか?」

「話さない。放っておいて。私に関わって来ないでよ...」

私が逃げようとするからだろう。両腕を掴まれた。その拍子にブラウスの袖がめくれてしまい傷を見られてしまった。

「これって...」

「なんでもないから!!もう、離してよ!!」

だんだん自制が効かなくなってスカートのポケットからハサミを出した。純はそれを見てすぐ何するからわかったみたいで奪おうとしたが、私の方が早く手首を傷つけられた。