「帰るか...」

足首にトイレットペーパーを巻きトイレを出た。毎日こんな事してろくな処置もしないから貧血気味だ。今日は特に酷い。身体がフラフラして目も霞む。

「あら、あんたまだいたの?」

教室に入ると私の事をいじめている女子数人がいた。その人に関わることすら面倒臭くて帰り支度を始めると肩を掴まれた。

「無視すんなよ。」

「なんですか?」

見向きもせず聞くと、その態度が気に入らなかったのか背中を蹴られた。思いっきりお腹をイスにぶつけ、痛みで丸まっている私を女子数人は蹴ったり踏んだりしてきた。

「どうしてこんなにいじめてるのに居なくならない訳?」

「あんたみたいな奴、生きてる価値ないんだよ。」

どれだけ蹴られても酷い言葉を言われても痛みを感じなかった。さっきお腹をぶつけた時は痛みを感じたのに。

「こいつ動かなくなっちゃったよ。」

「え、死んだ?」

「おーい、生きてる?」

床に倒れている私の顔の前で手をヒラヒラさせてる女子の笑顔が気持ち悪かった。どうして笑顔でいられるの?人をいじめて、何が楽しいの?

「あ、動いた。」

「めて...ください。」

「え、何?聞こえない。」

「もうやめて下さい!私をいじめても、なんにも得られません。時間の無駄です。」

入学して初めてハッキリと声を出した。女子達は一瞬驚いたが、すぐ元の表情に戻った。

「やだね。だって楽しいし。」

「それにあんたが悪いんだよ。今野君と仲良くするから。」

「純とは幼なじみなだけです。」

「それが腹立つのよ。私は今野君と仲良くしたいのに、あんたがいるせいで仲良く出来ない。だから苦痛をあじあわせてやるの。」

本当にこの世って平等じゃない。こんな意味不明な理由でいじめられて。好きで純と幼なじみになった訳じゃないのに。

「わかった?あんたはこの一年間ずっといじめられるの。安心して?死なないようにはするから。」

それはやばいってーっと言いながら笑うこの人達が人間で、私が人間じゃないのかな。だったらもういいや。この人達のされるがままになっていよう。それが人間だというのなら。

「みんなで一発殴ってから帰ろ。まずうちからー」

座り込んでいる私の両腕は掴まれ、逃げられなくなった。元々、逃げるつもりもないけれど。

「いっくよー」

殴られる。そう思って目を閉じた時、

「何やってんだよ!」

純の声が聞こえた。そんな訳ない。私の気のせいだと目を開けると、本当に純がいた。

「あ...今野君...これは...」

「うるさい。早く散れ、クソ女ども。」

純にしては珍しく怒っていた。口調も強いから、女子数人は私から離れた。