人は生まれながらにして平等ではない。二人が完璧ならもう一人はそれ以上にさせようとする。この子ができたのだから、あなたも出来るでしょって。そんな人間がいるのかって思う人もいるだろう。それがいるのだ。私の両親がそうだから。私には姉と弟がおり、その二人は完璧に近い。だから私に要求されるものもおのずと大きくなる。それに応える為、必死に生きてきた。二人より完璧になれば、私を見てくれる。小さい頃のように、褒めてもらえる。本気でそう思っていたから。

「桜ってほんとダメね。冬香や彗と比べて何にも出来ない。同じ親から生まれてきたのにどうしてかしら。」

しかし私は聞いてしまった。母親が父親にそう言っているのを。

忘れもしない。その日は中学の実力テストが返ってきて結果が十位以内に全教科入っていたのだ。努力が報われた気がして、すぐ母親に言おうとした時にあんな言葉だ。とても心が痛かったがこのテスト結果を見せたら変わるかもしれない。そう思い私は何も聞かなかったフリをして両親にテスト結果を見せた。しかし。

「あなたと同い年の頃、冬香はもっと順位高かったわ。頑張りが足りないのよ。」

完全に心が壊れるのを感じた。母親は私に求めているフリをして、出来ない私を見て楽しんでいる。本気でそう思ってしまった。頑張りが足りないって、じゃあどうしたらいいのか教えてもくれないのに何言ってるのよ。それに家の事を大半私がやってるんだから勉強する時間が姉さんより少なくて当然じゃない。

「ごめんなさい。」

心の中の黒い私はそれらを口にしてくれるのを待っているが、白い私が言わせない。今私がそれらを言ってしまったらここから追い出される。そうしたら私は今よりもっと辛いだろう。だから言わずにいた。