昔からバスケが好きだった。
中学校教師である母と高校教師の父から僕は産まれた。
バスケ部の顧問でもある父は、僕が小学校に入ると同時にバスケを教えた。
休みの日には一緒にバスケをしたり、試合も何回も見に行った。
プロの試合だけでなく、父が教えている生徒の試合も見せてもらった。
「光希はバスケの才能があるな」
などと事ある度に言ってきた。
まだ幼かった僕は父からの言葉を本気で信じ込み、バスケに対する熱意をどんどん増していった。
中学校へと進級すると迷わずバスケ部に入部した。
僕の実力はすぐに認められ、一年生の内からベンチ入りすることが出来る。
そして、一年生大会や新人戦などでも、実績を残すことが出来た。
小学校の時に父に言われた通り、僕にはバスケの才能があったのだ。
シュート力、ドリブル力、ディフェンス力、全ての力がずば抜けて周りより秀でていた。
一年生大会、そして新人戦と共に最多得点王になり、県内の中学生バスケプレイヤーの中では、僕の名は有名になる。
顧問からもキャプテンをやらないか、と言われたが断った。
チームをまとめられる自信はなく、ただバスケ選手になるために強くなりたいと思っただけだったから。
そんな僕は三年生になると同時に父とある約束を交わす。
──中学校最後の大会で全国に行くと
※「残り時間三分! がんばれ!」
ベンチから聞こえてくる声援。
中総体決勝。勝てば全国出場。
点数差は三点。
どちらが勝つかは最後の最後まで分からない状況だ。
このまま逃げ切れれば勝てる。
頭ではそんなことを考えていたが、そんな考えは浅はかだった。
「四番フリー!」
キャプテンからの声で気づく。
相手の四番がノーマークになっていることに。
そんな一瞬の隙だった。
フリーの四番へとパスは繋がり、スリーポイントを決められ、試合は振り出しに戻る。
完全に油断してしまった。試合は同点のまま残り二分を切る。
「光希、次リバウンド頼む」
キャプテンからの僕に任せるという指示。僕より背の高いやつは他にいる。でもキャプテンはこの状況で僕を選んだ。
その意味を理解していた。僕は信じてくれたキャプテンに従い、プレーが再開すると同時に相手のゴール下へと走った。相手のゴール下は、僕なんかよりもガタイが良く背も高い。
リバウンドで勝てる自信なんて微塵もない。だけどキャプテンは僕に託してくれた。
ここまで来て引き下がる訳には行かない。
キャプテンのドリブル力は僕もすごいと思うくらい上手い。一人、二人と抜いていき完全にフリーになる。
そして彼の放ったシュートは弧を描く。
その場の誰もが完全に入ると思った。それぐらい完璧なフォームとシュート。
しかし、そのシュートは惜しくもリングにあたり、ボールは宙へ高く上がる。
それと同時に僕は飛んだ。リバウンドを取ること、それが今の僕の仕事。絶対に取らないといけない。
相手も同時に飛んだが、僕の方が先にボールに触れる。このまま決めれば勝てる。
そう思った時だった──
相手選手が空中でバランスを崩し、勢いよく僕にぶつかる。そして、僕もバランスを崩し勢いよく地面に体を打った。
──ドンッ
一瞬何が起きたか分からなかった。しかし鈍器で殴られた様な、強烈な痛みが僕の足を襲う。
うっ・・・・・・
完全に立つことが出来ない。すぐに僕は担架で医務室へと運ばれる。今までにない程の足の痛み。
立っていることさえもきついほど。僕の足の痛みはただの打撲などではなかった。そのため、副顧問の車で病院へと向かった。
「光希くん・・・・・・残念だけど君の足はもう前のようには動かすことは出来ないんだ・・・・・・」
「っ・・・・・・」
医師から言われた言葉。頭に冷水をかけられた気分だった。そんなの嘘だ。
僕は医師の言葉を信用出来なかった。
これは何かのデタラメだ。みんなして僕をからかっているんだ。
しかし、追い打ちをかけるように、その医師は口を動かす。
「残念だけど君はもうバスケをすることはできない」
頭の中が空っぽになる。今まで積み上げてきたものが、一瞬で崩れていく気がした。
しかし、僕の絶望はそれだけじゃなかった。
試合が終わり顧問が遅れて病院にやってくる。
そして表情一つ変えずに淡々と言う。
「全国大会出場は出来なかった」
その言葉は僕に追い打ちをかけるかのように深く刺さった。父と約束した全国出場も出来ず、二度とバスケも出来なくなる。この世界は残酷だ。
僕はこの日人生初めての挫折を味わった。そして僕は夢をなくしたまま高校二年生へとなっていた。
あの日から僕は心に決めた。
──もう二度とバスケをしないと
中学校教師である母と高校教師の父から僕は産まれた。
バスケ部の顧問でもある父は、僕が小学校に入ると同時にバスケを教えた。
休みの日には一緒にバスケをしたり、試合も何回も見に行った。
プロの試合だけでなく、父が教えている生徒の試合も見せてもらった。
「光希はバスケの才能があるな」
などと事ある度に言ってきた。
まだ幼かった僕は父からの言葉を本気で信じ込み、バスケに対する熱意をどんどん増していった。
中学校へと進級すると迷わずバスケ部に入部した。
僕の実力はすぐに認められ、一年生の内からベンチ入りすることが出来る。
そして、一年生大会や新人戦などでも、実績を残すことが出来た。
小学校の時に父に言われた通り、僕にはバスケの才能があったのだ。
シュート力、ドリブル力、ディフェンス力、全ての力がずば抜けて周りより秀でていた。
一年生大会、そして新人戦と共に最多得点王になり、県内の中学生バスケプレイヤーの中では、僕の名は有名になる。
顧問からもキャプテンをやらないか、と言われたが断った。
チームをまとめられる自信はなく、ただバスケ選手になるために強くなりたいと思っただけだったから。
そんな僕は三年生になると同時に父とある約束を交わす。
──中学校最後の大会で全国に行くと
※「残り時間三分! がんばれ!」
ベンチから聞こえてくる声援。
中総体決勝。勝てば全国出場。
点数差は三点。
どちらが勝つかは最後の最後まで分からない状況だ。
このまま逃げ切れれば勝てる。
頭ではそんなことを考えていたが、そんな考えは浅はかだった。
「四番フリー!」
キャプテンからの声で気づく。
相手の四番がノーマークになっていることに。
そんな一瞬の隙だった。
フリーの四番へとパスは繋がり、スリーポイントを決められ、試合は振り出しに戻る。
完全に油断してしまった。試合は同点のまま残り二分を切る。
「光希、次リバウンド頼む」
キャプテンからの僕に任せるという指示。僕より背の高いやつは他にいる。でもキャプテンはこの状況で僕を選んだ。
その意味を理解していた。僕は信じてくれたキャプテンに従い、プレーが再開すると同時に相手のゴール下へと走った。相手のゴール下は、僕なんかよりもガタイが良く背も高い。
リバウンドで勝てる自信なんて微塵もない。だけどキャプテンは僕に託してくれた。
ここまで来て引き下がる訳には行かない。
キャプテンのドリブル力は僕もすごいと思うくらい上手い。一人、二人と抜いていき完全にフリーになる。
そして彼の放ったシュートは弧を描く。
その場の誰もが完全に入ると思った。それぐらい完璧なフォームとシュート。
しかし、そのシュートは惜しくもリングにあたり、ボールは宙へ高く上がる。
それと同時に僕は飛んだ。リバウンドを取ること、それが今の僕の仕事。絶対に取らないといけない。
相手も同時に飛んだが、僕の方が先にボールに触れる。このまま決めれば勝てる。
そう思った時だった──
相手選手が空中でバランスを崩し、勢いよく僕にぶつかる。そして、僕もバランスを崩し勢いよく地面に体を打った。
──ドンッ
一瞬何が起きたか分からなかった。しかし鈍器で殴られた様な、強烈な痛みが僕の足を襲う。
うっ・・・・・・
完全に立つことが出来ない。すぐに僕は担架で医務室へと運ばれる。今までにない程の足の痛み。
立っていることさえもきついほど。僕の足の痛みはただの打撲などではなかった。そのため、副顧問の車で病院へと向かった。
「光希くん・・・・・・残念だけど君の足はもう前のようには動かすことは出来ないんだ・・・・・・」
「っ・・・・・・」
医師から言われた言葉。頭に冷水をかけられた気分だった。そんなの嘘だ。
僕は医師の言葉を信用出来なかった。
これは何かのデタラメだ。みんなして僕をからかっているんだ。
しかし、追い打ちをかけるように、その医師は口を動かす。
「残念だけど君はもうバスケをすることはできない」
頭の中が空っぽになる。今まで積み上げてきたものが、一瞬で崩れていく気がした。
しかし、僕の絶望はそれだけじゃなかった。
試合が終わり顧問が遅れて病院にやってくる。
そして表情一つ変えずに淡々と言う。
「全国大会出場は出来なかった」
その言葉は僕に追い打ちをかけるかのように深く刺さった。父と約束した全国出場も出来ず、二度とバスケも出来なくなる。この世界は残酷だ。
僕はこの日人生初めての挫折を味わった。そして僕は夢をなくしたまま高校二年生へとなっていた。
あの日から僕は心に決めた。
──もう二度とバスケをしないと