昨日の朱莉との一件で、さすがに少し言い過ぎたなと思った。
確かに僕は自分で無理だと決めつけて、バスケから離れようとした。
朱莉は僕のためにもう一度バスケをすることを勧めてくれた。
それなのに、あの言い方はさすがに酷かったな。
僕は何をしているんだ。
彼女のために出来ることなら何でもすると言ったのに、彼女のことを傷つけてしまうなんて。
今日学校で謝ろう。許してくれるかは分からない。
でも朱莉ならきっと許してくれると思った。
学校に行くと朱莉はまだいなかった。
いつもならもう少しすれば来るから僕はそれまで待つ。
しかし、一時間目が始まっても彼女は来なかった。
先生も何も連絡が入ってないと言っているし、僕は心配になる。
でもメッセージを送る勇気は僕には無い。
すると一時間目が終わると工藤先生が、朱莉は遅刻してくると言いに来た。
朱莉は二時間目が終わったところで、学校に来た。
だけど僕は彼女に謝るどころか、話しかけることさえも出来なかった。
三時間目も四時間目も移動があったため、話しかけるチャンスもない。
結局謝れないまま昼休みに入ってしまう。
「今日の光希元気ないな」
僕の顔を覗き込んで湊音が言う。
「ちょっと色々あってね」
「朱莉のことか?」
朱莉の名前が出てきて、僕は湊音の方を見る。
「なんで分かるの?」
「昨日の会話少し聞こえててな。俺は光希の足のことも知ってるから、お前の気持ちはよくわかるよ」
湊音は優しく微笑みながら共感してくれる。
「お前のことだから強く言いすぎたことでも、後悔してるんだろ」
「・・・・・・」
湊音には全部お見通しだった。
「朱莉のこと探してきてやるからちゃんと謝れよ」
彼は席を立ち、教室を出ていった。
僕は教室に取り残される。
湊音に勝手に話を進められてるけど、ちゃんと謝ることが出来るだろうか。
謝りたいと思っても、少し躊躇ってしまう。
だけどここで謝らなきゃ、僕は後悔するだろう。
二人が戻ってくるのを僕は静かに待つ。
ーキーンコーンカーンコーン。
授業開始を告げるチャイム。
朱莉を探しに行った湊音はまだ帰ってきていない。
僕の隣の朱莉の席は空席。
二人ともどこに行ったんだろう。
二人だけじゃなく、先生もなかなか現れない。
もしかしたら二人に何かあったのだろうか。
少しして湊音が息を切らして教室に入ってくる。
その顔は少し離れていてもわかるぐらいに真っ青だった。
「はぁはぁ・・・・・・朱莉が急に倒れて・・・・・・病院に運ばれたらしい・・・・・・」
「えっ・・・・・・」
朱莉が倒れた?
僕の頭の中は真っ白になる。こんなことを暇じゃない。
僕はとっさにスマホを手に持ち教室を飛び出した。
「光希? どこ行くんだよ!」
教室から僕の名を呼ぶ湊音の声。
ごめん湊音。今だけは許してくれ。
もし朱莉に何かあったら・・・・・・
急に教室を飛び出した僕を、クラスメイトたちはどう思っただろう。
だけど、今の僕にそんなことはどうでもいい。
「おい! お前何してるんだ!」
運悪く生徒指導部の先生に捕まってしまう。
「離してください」
ここで引き下がるわけにはいかない。
僕は真っ直ぐに先生の目を見て告げる。
「何でこんなところにいる? 今は授業中だ。教室に戻れ」
「今行かなかったらきっと一生後悔します」
先生の手を思い切り振り払い僕は走った。
「おい! 待て!」
背後から聞こえる先生の声を無視して、僕は学校を出た。
勢いで学校を出たのはいいが、朱莉の運ばれた病院ってどこだ?
焦りすぎてしまったが、僕は彼女がどこの病院に運ばれたか分からない。
急いで最寄りの病院を調べる。
すると学校から約20分ぐらいの所に大きな病院があるとわかった。
きっと朱莉が運ばれたのはここだ。
僕はその病院を目指し走る。
「・・・・・・うぅ・・・・・・足が・・・・・・」
病院までもうすぐだと言うのに、僕の足はピタリと動くことを止める。
これ以上はもう走れない。
そう思わせるような痛みが僕を襲う。
今動かなくてどうするんだ。
ここで行かなきゃ僕は一生後悔する。
動け、動け、動け!
僕は最後の気力を振り絞り、足の痛みに抗った。
病院に着いた僕は、急いでカウンターに向かう。
呼吸を整えて受付の女性に尋ねる。
「先程あか・・・・・・姫野と言う人が運ばれてきませんでしたか」
「姫野さんなら202号室にいますよ」
僕はお礼を言い、急いで202号室に向かう。
階段を上り少し奥の方へ進むと、202号室と書かれた部屋を見つける。
よく考えれば急に僕が現れたら彼女はどんな反応をするのだろう。
さすがに引かれてしまうか。
ここまで来て考えても仕方ない。
ノックをすると女性の声で、「どうぞ」と返ってきたので僕は中へと入る。
「光希くん・・・・・・どうして・・・・・・?」
「岩瀬くん、なんで君が・・・・・・? 授業はどうしたの?」
病室には工藤先生とベッドに座る朱莉がいた。
僕の登場で2人とも信じられないという顔をしている。
それもそうだ、他のみんなは今は授業中なのだから。
「せんせ・・・・・・」
「詳しい話は後で聞かせてもらうわ。私は一度ここを離れるから、姫野さんをお願いね」
先生は気を利かせてくれたのか、僕たち2人を残して病室の外へ出ていく。
後で先生に全部話さないとな。
先生はどう思うんだろう。
「それでどうして光希くんがここにいるの?」
「えっと・・・・・・朱莉が心配だったから・・・・・・」
改めて考えるとすごい恥ずかしい。
同じクラスの女子女子が倒れたと言って、息を切らしてまで病院に来るなんて。
僕は赤面する顔を隠しながら言う。
「ありがとう・・・・・・」
彼女の声はいつもの明るい声とは違う。
その目には涙が溜まり、笑顔はとても切ない。
「朱莉・・・・・・大丈夫だよ・・・・・・」
僕はとっさに彼女を抱きしめた。
少しでも彼女の気持ちを楽にしてあげたい。
僕の胸の中で泣き続ける彼女を、僕は落ち着くまで強く抱きしめる。
彼女が落ち着いてきたら、僕はゆっくり彼女から離れた。
「ごめんね、こんな情けない姿見せちゃって」
そう言っていつもの笑顔を見せる朱莉。
その笑顔を見るだけで、僕の方が辛くなってくる。
なんでこんなにも素敵な人が、こんな目に遭わなきゃ行けないのだろう。
僕と出会った時から、朱莉はずっと明るかった。
だけどその裏で、彼女はずっと病気と闘っていたんだ。
彼女を抱きしめた時、とても小さく感じた。
あんなに小さな体で、ずっと病気と闘って来たんだ。
それなのに僕は何もしてあげれない。
そんな無力な自分が嫌になる。
「僕が君にしてあげられることなんてほとんどないと思う。だけどこんな僕にもできることがあれば直ぐに行って欲しい」
どんな事でもいい。彼女のために出来ることがあるのなら、僕はしてあげたい。
「光希くんなんか変わったね。ありがとう」
僕が変わったのは、ぜんぶ君のせいだよ。
違うな。君のおかげで僕はこんなにも、誰かのためを思って行動ができるようになったんだ。
彼女に僕は助けられたんだ。次は僕が彼女を助ける番。
その時、ドアが空いて工藤先生が戻ってくる。
「岩瀬くん、詳しい事情はまた明日聞くから、今日のところは帰りなさい」
「はい、すみません」
僕は一礼して病室を出る。
時間的に学校ではまだみんな授業をしているだろう。
こんな時間に家に帰ったら、陽菜に何か言われる。
かと言ってどこにも行く宛はない。
やっぱり諦めて帰ろう。
家に着くと、陽菜はリビングで勉強をしていた。
電車の時間などもあり、家に着いた時間は、学校が少し早く終わったと言い訳すれば全然問題ないくらいだった。
「おかえり、どうしたのそんな顔して。何かあったの?」
やっぱり家族に隠し事は出来ないということか。
家族というのはすごい。
「実は・・・・・・」
僕は朱莉のことを全て話した。
勝手に話すということは良くないって分かっている。
だけど、僕一人で抱えるには大きすぎる。
陽菜は最後まで真剣に聞いてくれた。
「光希は朱莉ちゃんのことが好きなんだよね?」
「うん」
「それなら朱莉ちゃんのために出来ることを精一杯してあげなさい」
「わかったありがとう」
「後悔しないようにしなさい、何かあったら相談してね」
陽菜の言葉で僕の気持ちはまとまった。
朱莉の力になれるならどんなことだってする。
僕は彼女を絶対に失いたくない・・・・・・
確かに僕は自分で無理だと決めつけて、バスケから離れようとした。
朱莉は僕のためにもう一度バスケをすることを勧めてくれた。
それなのに、あの言い方はさすがに酷かったな。
僕は何をしているんだ。
彼女のために出来ることなら何でもすると言ったのに、彼女のことを傷つけてしまうなんて。
今日学校で謝ろう。許してくれるかは分からない。
でも朱莉ならきっと許してくれると思った。
学校に行くと朱莉はまだいなかった。
いつもならもう少しすれば来るから僕はそれまで待つ。
しかし、一時間目が始まっても彼女は来なかった。
先生も何も連絡が入ってないと言っているし、僕は心配になる。
でもメッセージを送る勇気は僕には無い。
すると一時間目が終わると工藤先生が、朱莉は遅刻してくると言いに来た。
朱莉は二時間目が終わったところで、学校に来た。
だけど僕は彼女に謝るどころか、話しかけることさえも出来なかった。
三時間目も四時間目も移動があったため、話しかけるチャンスもない。
結局謝れないまま昼休みに入ってしまう。
「今日の光希元気ないな」
僕の顔を覗き込んで湊音が言う。
「ちょっと色々あってね」
「朱莉のことか?」
朱莉の名前が出てきて、僕は湊音の方を見る。
「なんで分かるの?」
「昨日の会話少し聞こえててな。俺は光希の足のことも知ってるから、お前の気持ちはよくわかるよ」
湊音は優しく微笑みながら共感してくれる。
「お前のことだから強く言いすぎたことでも、後悔してるんだろ」
「・・・・・・」
湊音には全部お見通しだった。
「朱莉のこと探してきてやるからちゃんと謝れよ」
彼は席を立ち、教室を出ていった。
僕は教室に取り残される。
湊音に勝手に話を進められてるけど、ちゃんと謝ることが出来るだろうか。
謝りたいと思っても、少し躊躇ってしまう。
だけどここで謝らなきゃ、僕は後悔するだろう。
二人が戻ってくるのを僕は静かに待つ。
ーキーンコーンカーンコーン。
授業開始を告げるチャイム。
朱莉を探しに行った湊音はまだ帰ってきていない。
僕の隣の朱莉の席は空席。
二人ともどこに行ったんだろう。
二人だけじゃなく、先生もなかなか現れない。
もしかしたら二人に何かあったのだろうか。
少しして湊音が息を切らして教室に入ってくる。
その顔は少し離れていてもわかるぐらいに真っ青だった。
「はぁはぁ・・・・・・朱莉が急に倒れて・・・・・・病院に運ばれたらしい・・・・・・」
「えっ・・・・・・」
朱莉が倒れた?
僕の頭の中は真っ白になる。こんなことを暇じゃない。
僕はとっさにスマホを手に持ち教室を飛び出した。
「光希? どこ行くんだよ!」
教室から僕の名を呼ぶ湊音の声。
ごめん湊音。今だけは許してくれ。
もし朱莉に何かあったら・・・・・・
急に教室を飛び出した僕を、クラスメイトたちはどう思っただろう。
だけど、今の僕にそんなことはどうでもいい。
「おい! お前何してるんだ!」
運悪く生徒指導部の先生に捕まってしまう。
「離してください」
ここで引き下がるわけにはいかない。
僕は真っ直ぐに先生の目を見て告げる。
「何でこんなところにいる? 今は授業中だ。教室に戻れ」
「今行かなかったらきっと一生後悔します」
先生の手を思い切り振り払い僕は走った。
「おい! 待て!」
背後から聞こえる先生の声を無視して、僕は学校を出た。
勢いで学校を出たのはいいが、朱莉の運ばれた病院ってどこだ?
焦りすぎてしまったが、僕は彼女がどこの病院に運ばれたか分からない。
急いで最寄りの病院を調べる。
すると学校から約20分ぐらいの所に大きな病院があるとわかった。
きっと朱莉が運ばれたのはここだ。
僕はその病院を目指し走る。
「・・・・・・うぅ・・・・・・足が・・・・・・」
病院までもうすぐだと言うのに、僕の足はピタリと動くことを止める。
これ以上はもう走れない。
そう思わせるような痛みが僕を襲う。
今動かなくてどうするんだ。
ここで行かなきゃ僕は一生後悔する。
動け、動け、動け!
僕は最後の気力を振り絞り、足の痛みに抗った。
病院に着いた僕は、急いでカウンターに向かう。
呼吸を整えて受付の女性に尋ねる。
「先程あか・・・・・・姫野と言う人が運ばれてきませんでしたか」
「姫野さんなら202号室にいますよ」
僕はお礼を言い、急いで202号室に向かう。
階段を上り少し奥の方へ進むと、202号室と書かれた部屋を見つける。
よく考えれば急に僕が現れたら彼女はどんな反応をするのだろう。
さすがに引かれてしまうか。
ここまで来て考えても仕方ない。
ノックをすると女性の声で、「どうぞ」と返ってきたので僕は中へと入る。
「光希くん・・・・・・どうして・・・・・・?」
「岩瀬くん、なんで君が・・・・・・? 授業はどうしたの?」
病室には工藤先生とベッドに座る朱莉がいた。
僕の登場で2人とも信じられないという顔をしている。
それもそうだ、他のみんなは今は授業中なのだから。
「せんせ・・・・・・」
「詳しい話は後で聞かせてもらうわ。私は一度ここを離れるから、姫野さんをお願いね」
先生は気を利かせてくれたのか、僕たち2人を残して病室の外へ出ていく。
後で先生に全部話さないとな。
先生はどう思うんだろう。
「それでどうして光希くんがここにいるの?」
「えっと・・・・・・朱莉が心配だったから・・・・・・」
改めて考えるとすごい恥ずかしい。
同じクラスの女子女子が倒れたと言って、息を切らしてまで病院に来るなんて。
僕は赤面する顔を隠しながら言う。
「ありがとう・・・・・・」
彼女の声はいつもの明るい声とは違う。
その目には涙が溜まり、笑顔はとても切ない。
「朱莉・・・・・・大丈夫だよ・・・・・・」
僕はとっさに彼女を抱きしめた。
少しでも彼女の気持ちを楽にしてあげたい。
僕の胸の中で泣き続ける彼女を、僕は落ち着くまで強く抱きしめる。
彼女が落ち着いてきたら、僕はゆっくり彼女から離れた。
「ごめんね、こんな情けない姿見せちゃって」
そう言っていつもの笑顔を見せる朱莉。
その笑顔を見るだけで、僕の方が辛くなってくる。
なんでこんなにも素敵な人が、こんな目に遭わなきゃ行けないのだろう。
僕と出会った時から、朱莉はずっと明るかった。
だけどその裏で、彼女はずっと病気と闘っていたんだ。
彼女を抱きしめた時、とても小さく感じた。
あんなに小さな体で、ずっと病気と闘って来たんだ。
それなのに僕は何もしてあげれない。
そんな無力な自分が嫌になる。
「僕が君にしてあげられることなんてほとんどないと思う。だけどこんな僕にもできることがあれば直ぐに行って欲しい」
どんな事でもいい。彼女のために出来ることがあるのなら、僕はしてあげたい。
「光希くんなんか変わったね。ありがとう」
僕が変わったのは、ぜんぶ君のせいだよ。
違うな。君のおかげで僕はこんなにも、誰かのためを思って行動ができるようになったんだ。
彼女に僕は助けられたんだ。次は僕が彼女を助ける番。
その時、ドアが空いて工藤先生が戻ってくる。
「岩瀬くん、詳しい事情はまた明日聞くから、今日のところは帰りなさい」
「はい、すみません」
僕は一礼して病室を出る。
時間的に学校ではまだみんな授業をしているだろう。
こんな時間に家に帰ったら、陽菜に何か言われる。
かと言ってどこにも行く宛はない。
やっぱり諦めて帰ろう。
家に着くと、陽菜はリビングで勉強をしていた。
電車の時間などもあり、家に着いた時間は、学校が少し早く終わったと言い訳すれば全然問題ないくらいだった。
「おかえり、どうしたのそんな顔して。何かあったの?」
やっぱり家族に隠し事は出来ないということか。
家族というのはすごい。
「実は・・・・・・」
僕は朱莉のことを全て話した。
勝手に話すということは良くないって分かっている。
だけど、僕一人で抱えるには大きすぎる。
陽菜は最後まで真剣に聞いてくれた。
「光希は朱莉ちゃんのことが好きなんだよね?」
「うん」
「それなら朱莉ちゃんのために出来ることを精一杯してあげなさい」
「わかったありがとう」
「後悔しないようにしなさい、何かあったら相談してね」
陽菜の言葉で僕の気持ちはまとまった。
朱莉の力になれるならどんなことだってする。
僕は彼女を絶対に失いたくない・・・・・・