俺は、6年ぶりにカグヤに逢えた。

 そして、再び恋に落ちた。

 もう、俺は我慢しない。

 全身全霊を込め、カグヤのために、俺の全てを捧げよう。




 良かった……!まだ、生きてる!!本当に良かった…!

 だが、鎖につながれて、苦しそうにしている……!

 俺は怒りでどうにかなりそうだった……!

 そして、こいつらか……俺の愛する女性をこんな目に合わせているのは……!

「貴様!何奴!?何しに来た!?衛兵!何をしている!?」

「きゃー!なんなのよ!アンタは!?」

 この国の皇太子と、不細工な女が何やらわめき散らしている。

「何って、助けに来たんだよ!」

 俺は彼女を縛っていた鎖を、剣で断ち切る!

「も、もしや……クロウ!?何故……」

「カグヤ、君を愛しているからだ。君をこんなところで死なせやしない……!」

「え!?あ、あの……私を……?」

 カグヤは涙を流し、顔を真っ赤にしている。
 無理もない……無実の罪で、結婚するはずだった男に殺されようとしているのだから……。

「そうだ!だが、俺のことを好きになってくれとは言わない!ただ、君を守らせてくれ!俺は全身全霊をかけて君のために、この剣を振るおう!!」

「ク、クロウ……いけないわ!私の為に……貴方は、国境を守る守護者なのに……」

「カグヤを殺そうとする国になど、最早未練はない!!俺は、カグヤを守る為に強くなった!!話は後だ!!今は、俺を信じてくれ!!」

「は、はい!あ、ありがとう……!」

 俺はカグヤを片手で抱き寄せ、処刑台から兵士達を見下ろす。

 「さあ!!そこを退け!!死になくなければな!!」

 俺が気合いを込めて言うと、兵士達は尻込みする。

「兵士共!!殺せ!!その女もだ!」

 俺の怒りが頂点に達した。

「誰を殺すだと……お前が死ね!!」

 アスカロンを背中から抜き、剣技を放つ!

「魔刃剣!!」

「なーっ!?」

「カイル殿下!!」

 皇太子の前に、騎士が出てきて剣を振るう!

「ッ!!!なんという威力……!俺の腕が痺れるだと!?」

「チィ!!もう、一度……」

「待て!!貴様の目的はなんだ!?」

「あぁ!?そんなこと決まってんだろ!ここいる、愛する女性をここから連れ出すことだ!!」

「ク、クロウ……!!」

「あっ、ごめんな。痛かったか?」

 少し、抱き寄せる腕に力が入ってしまった。

「い、いいえ……た、逞しくなったわね……」

「では、行くといい!!我らは手出しはせん!!」

「騎士団長!!何を言っている!?」

 なるほど……騎士団長か。
 どうりで、俺の剣技を防げるわけだ。

「カイル殿下!!ここは逃がすべきかと!でないと、殿下の身の安全が確保出来ません!!」

「なーっ!?そ、そんなに強いのか!?ここには、奴1人しかいないぞ!?」

「兵士達を見てください!!奴の覇気により腰が引けています!使い物になりませぬ!」

「ええーい!!うるさい!!弓部隊!!魔法部隊!!全方位から撃て!!」

「カグヤ!!耳を塞いでくれ!!」

「え!?う、うん!!」

 次の瞬間、全方位から魔法や矢が飛んでくる!

 俺は魔力を溜め、全方位に向けて放つ!!

「ハァァ!!」

 魔力の壁に当たり、魔法や矢が弾ける!!

 ドン!ドン!ドン!と連続して轟音が鳴り響く!


「ほら!見ろ!!これで、お終いだ!!」

「誰が、お終いだって……?」

 俺とカグヤは無傷のままだ。
 ただ、さすがに耳がキーンとするな。


「なーっ!?ば、馬鹿な!?む、無傷だと!?」

「カグヤ。嫌かもしれないが、俺の首に手をまわして掴まってくれ」

「い、嫌ではないわ!わ、わかったわ……」

 俺は片腕にカグヤを乗せ、処刑台から降りる。

 ……こんな華奢な身体で今まで頑張ってきたのか……。

 これからは、1人になどさせない……!

 カグヤが、誰を好きでも関係ない。

 俺は、一生カグヤを守り抜く!!

「聞けぇ!!道を阻む者は殺す!!死にたい奴だけ、前に出ろ!!」

「ヒィ!!」

「お、俺は死にたくない!」

「わ、わかった!!退くから!殺さないでくれ!!」

 俺はカグヤを抱えつつ、油断せずに進んでいく……。

 そして兵士達の囲みを抜けた瞬間、俺はカグヤに言う。

「カグヤ!!失礼する!!」

 俺は、カグヤをお姫様抱っこする。

「え?きゃっ!?」

「今だーー!!撃てーー!!」

 やはりな……!このタイミングを狙ってきたか!!

 俺は足に魔力を込めて、後ろ回し蹴りを放つ!!

 俺が放った魔力の波と、魔法や弓が衝突する!!

 そして砂埃が発生する!

 よし!これを待っていた……!

 俺はカグヤをお姫様抱っこしつつ、その隙に駆け出す!!

「待てーー!!逃すな!!」

 俺はその言葉を背にしながら、街の中に紛れ込んでいく……。








 そして、手薄な門の兵を蹴散らし、帝都からの脱出に成功する。

「よし……追っ手は、今のところいないか」

「あ、あの……クロウ……?」

「ああ、ごめんな。馬がないから、村まで我慢してくれ」

「う、うん……じゃなくて!」

「ああ、そうだな。まずは挨拶か。久しぶりだな、カグヤ」

「そうね、もう6年も経つわ……じゃなくて!!もう!!」

「なんだ!?なんで叩くんだ!?カグヤは、相変わらずだな!」

「クロウこそ、相変わらずね!もういいわ!!……その……助けてくれてありがとう……」

 ……なんて可愛いんだ!!

 でも、良かった……カグヤを守ることが出来て……。

 本当に……良かった……!

 俺は懐かしさと嬉しさで、涙を堪えるのに精一杯だった。