私の名は、アルセリア-バーグ。

 このベルモンド帝国の宰相にして、侯爵家の当主だ。

 絶大な権力と、武力を行使できる存在だ。

 ……ようやく、ここまできた。

 ここまでくるのに長かったものよ……。

 自分の国を追われ、魔の森で迷い、死にそうになりながらもなんとか生き抜いた。

 これも、私には使役魔法の才能があったからだ。

 だから、魔の森でも生き残ることが出来た。

 いや、魔の森で迷ったから開花したと言ってもいい。

 とある古代遺跡にて、強力な使役魔法を覚えたからだ。

 それと、解読できない古文書もいくつか手に入れた。

 それにより、強力な魔物と契約して、なんとか生き抜いた。

 私は誓った……私を追い出した奴らに復讐すると!!



 だが、そのためには力が必要だ。

 所詮1人では、どうにもならない。

 なので、絶大な権力をもつアルセリア侯爵家に目をつけた。

 代々、多くの当主が宰相を務めていたからだ。

 まずは使役した魔物を使い、侯爵家家族が遠出をするという情報を得た。

 5人家族で夫婦2人、長男次男、長女の家族だ。

 そこを自分の魔物に襲わせて、自分が救出するという自作自演をした。

 もちろん、護衛の兵士や、当主以外の男は殺した。

 ただ、優秀な護衛達だったので、魔の森で使役した魔物はほぼ全滅してしまった。

 私自身も戦うことは出来たので、護衛達が全滅するのを待ち、助けに入った。

 そっからは簡単なことだ。

 命の恩人ということで、すぐに気に入られた。

 そしてうまく立ち回り、長女の婿となることができた。

 その後侯爵家を牛耳り、義理の親と嫁を事故死に見せかけて始末する。

 産まれた娘は、母親に似て容姿が良かった。

 こいつは使えそうなので、とっておくとする。




 その後は侯爵家の力と、私の力で精力的に活動した。

 邪魔になりそう奴の弱みを握り、場合によっては消していく。

 この国では使役魔法がほとんど知られていないので、色々と容易である。

 しかし……なんと平和ボケした国……いや、皇都だと思った。

 自分達の平和が、当たり前にずっと続くと思っているようだな。

 ……まあ、私はやりやすいからいいがな。




 
 ある程度時が経ち、私は古文書をある程度解読した。

 そして、歓喜した!

 この力が手に入れば、大陸の覇者にすらなれる!!

 まずは、計画を立てることにした。

 そのために、カイル皇子に取り入り、皇太子になれるように尽力した。

 こいつが、一番扱いやすそうだったからな。

 現皇帝は女にしか興味のない奴だから、こいつも扱いやすい。

 そして、宰相まで上り詰めた。

 だが、ここからが本番だ。



 
 しかし、まだ古文書の解読は完璧ではない……。

 目的の女であるカグヤ嬢を、近くで観察したい……どうすればいい?

 なので、耄碌した前皇帝に話を持っていった。

 カグヤ嬢を、皇太子の婚約者にどうか?と。

 辺境伯の裏切りを避けるためにもと。

 そして、計画通りにいった。
 



 その後、ようやく解読をしたのだが……。

 古文書によると、もっとも愛した者の死によって目覚めると書いてあった。

 どうする?皇太子とは仲が悪いから、ありえないな。

 ただ、まだ幼いから、少し様子を見るとしよう。

 さすがに私では、歳が違いすぎる。

 最終的には、私のモノになってもらうが、その前段階の話だ。




 それから数年が経った。

 カグヤ嬢は、相当真っ直ぐな性格のようだ。

 あれでは、皇太子とは相思相愛にはなるまい。

 カグヤ嬢が愛した皇太子を、殺すという計画は見直しだな。



 そんな時だった……東の国境で、白い虎と呼ばれる男の噂が流れてきたのは。

 私は気になり、色々と調べてみた。

 そして、再び歓喜した!

 そうか! 生きていたのか!

 一時期仲の良い幼馴染がいたということは、情報として知ってはいた。

 だが、追放後の足取りはわからなかった。

 まるで、誰かが邪魔をしたように……。

 なので、とっくに死んだと思っていた。

 そして、詳しく調べるうちに、色々な事実も発覚した。

 これは、本人が知っているか聞く必要があるな……。

 ……よし、娘を利用してカグヤ嬢を死刑にもっていこう。

 もちろん、実際にこなかった場合は、私の方で手は打っておく。

 本当に死なせるわけにはいかないからな。

 そして、結果は大成功だった。

 これで、東の国境の問題も解決した。

 あとは、私の方でコントロールをしよう。

 まだ、均衡を保たなくてはいけない。

 カグヤ嬢も、命がけで助けた幼馴染に、悪い感情は持つまい。

 うまくいけば、愛するかもしれん。




 使役している鷹を使い、あとを追っていく。

 ……いや、こやつらすでに相思相愛だな。

 これなら……よし、計画を立てるとしよう。

 フフフ……待っていろ……。

 クロウ君……すまないが、私の計画のために死んでくれたまえ。







 だというのに……何故だ!?

「ガァァァーーー!!!」

 痛い!!痛い!!痛い!!
 目がー!!目がーー!!

「宰相様!?どうなさりましたか!?」

「ひ、光魔法を!!早くしろ!!」

「はっ!ただ今、連れてまいります!!」

 お、おのれーー!!

 だ、ただじゃすまんぞ……!

 カグヤ嬢は、必ず手に入れる!!

 そしてクロウ!!貴様だけは許さん……!!

 カグヤ嬢の前で四肢を斬りとり、惨たらしく殺してやる!!