さて、今日も頑張るか。

 出来るだけ、部下を死なせないようにしなくてはな……。

「おい!クロウ!!」

「これは……ダークライト辺境伯ではありませんか。このような場所に来られるとは、いかがしましたか?」

 こいつの名前は、ブレイダ-ダークライト。
 この国の、もう1人の辺境伯だ。
 ……中身はまるで違うがな。
 こっちは自ら戦うこともなく、後方でふんぞり返っている。
 しかも、兵士だけに戦わせた上に手柄まで横取りにする。
 更には、たまにこのように来て、嫌味や無茶な命令をしてくる。

「何しに来ただと……!貴様の役立たずの部下のせいで、私の作戦は台無しだ!!罰として、配給は減らすからな!それと、守護者とか言われていい気になるんじゃないぞ!?」

「ちょっと!?それはあんたが……!」

「ナイル!……部下が失礼いたしました。わかりました、肝に命じます」

「ふん!しっかり教育しとけ!!」

 あのクソ野郎は言いたいことだけ言い、後方へ下がっていった。

「隊長!!何故ですか!?マルコは、あいつが無茶な命令をしたから……!それなのに、配給を減らされて……!ここを命がけで守っている隊長にあんなことを……!あいつは、何もしていないのに!!」

「お前の怒りはもっともだ……!だが、逆らえば、配給そのものが止められかねん……!」

「……隊長、手から血が……そうですよね。隊長が一番苦しいし、怒っていますよね……。大変、失礼いたしました!」

「気にするな、同じ気持ちだ。何度、後ろから斬ってやろうかと思ったか……」

 だが、我慢だ……!
 俺はカグヤの国を守る……!



 その後、戦闘が始まる。

 そして日が暮れて、今日の戦いも終わった。

 幸いなことに、俺の部隊は死者が出なかった。

「隊長!お疲れ様です!」

「ありがとう、ナイル。今日も助かったよ」

 ナイルは年齢22歳の青年で、俺より2つ上だ。
 俺が命を救って以来、敬意を払っているようだ。
 俺も敬語にしようとしたら、それはダメです!!と言われてしまった。
 まあ、今では階級は俺が上だし、問題はないのだが。
 ちなみに、我が隊の副隊長でもある。
 あと、隊の半分以上は歳上だ。
 全員、こんな俺を慕ってくれている……有り難いことだ。

「いえいえ、隊長がいてこそです。そういえば、聞きました?」

「ん?何かあったのか?」

「なんか、カイル皇太子の婚約者が死刑になるらしいですよ?あ、この場合は元婚約者になるのか?」

 ……今、なんと言った……?
 皇太子の婚約者とは誰だ……?
 ……カグヤではないか……!!

「おい!詳しく教えろ!!」

「た、隊長……?」

「いいから!!」

「は、はい!えっと、皇太子が婚約者である辺境伯の娘に、一緒にいた女性と共に毒殺されそうになったとか……それで、反逆罪として死刑になるって……」

「そんなバカな!!彼女がそんなことするわけがない!!」

 何年会っていなくても、それだけは断言できる!!
 彼女は、そんな姑息な手は使わない!!
 もし男が浮気したなら、その男をブン殴るタイプだ!!

「……何かあるのですね?皆!!集まってください!!」

 隊の皆が、俺のそばに来る。

「さあ、隊長。話してください。ここにいるのは、貴方の力になりたい奴らです」

 見渡すと、皆が頷いている……。

「皆、ありがとう……。では、時間がないから省略するが、話を聞いてくれ」

 俺は皆に伝えた。
 カグヤのこと。
 俺の生まれや、事情など。
 そして、ここにきた経緯などを……。

「ウウゥ……隊長……!苦労したんですね……!貴方は、愛する女性の為にずっと戦っていたのですね……!なるほど……今まで、事情を聞いても教えてくれないわけですね。皇太子の婚約者を愛しているとは言えませんからね……」

 隊の皆も、泣いている……。

「すまなかったな……幻滅したか?俺は、お前たちや国を守る為ではなく、ただ1人の女性を守りたかったんだ……!」

「何を言うのですか!?そんなことはありえません!!もし、そうだとしても、貴方が我々の命の恩人であることに変わりはありません!!」

「そうだ!そうだ!」 「こっちは、アンタに命捧げてんだよ!」

「お前達……感謝する……!」

「もっと言えば、その方は我々の命の恩人ということです。で、隊長。貴方は、どうなされますか?」

「……決まっている!!カグヤを助ける!!たとえどんな障害があろうとも!!」

「では、お急ぎを。誰か!馬を用意!!」

「だが……そうすると、お前達が……」

 そもそも、俺の行為は反逆罪だ。
 こいつらにも、累が及ぶかもしれん……!

「いえ、我々もここを出ます。隊長がいたから、我々はここにいたのです。隊長が何かを抱えていたことには、皆気づいておりましたから……馬が来ましたね、さあ!行ってください!!」

「隊長!ありがとう!!」「世話になったな!」「また生きてたら会おうぜ!」

「お前らもな!こんな俺についてきてくれて、感謝する!!また、どこかで会おう!!」

 俺は馬に跨り、駆け出す!!

 だが奥に進むには、千人将や三千将がいる野営地を通らなければいけない。

 ……奴らは、塞いでいる……兵士たちが逃げられないように……!

 自分達は戦いもせずに、毎日美味い飯を食い、女や酒に溺れている。

 良いだろう……貴様らを殺すことに躊躇いなどない!!

 蹂躙してやる!!