その後、余ったセルバの肉をエミリアに冷凍してもらう。

凍ってさえしまえば、後は寒いのでそうそう溶けることはない。

すると、そのタイミングでユキノが帰ってくる。

「ご主人様ー!」

「おっ、帰ったか。全く、どこまで行ってたんだ?」

「ただいまです……じゃなくて! ダンジョンを発見しました!」

「なに……詳しい話を聞こう。全員、火の回りに集まれ」

そして獣人達に見張りを任せ、主要メンバーで話を聞く。
アイザック、カリオン、俺、エミリア、ニール、ユキノだ。
ついでに朝飯が済んでない者は、食べながら聞く。
ちなみにフーコは、また俺の膝で寝ていた……こいつ、なにしに来たんだ? まあ、可愛いからよしとしよう。

「えっと、昨夜はずっと森を探索してたんですよー」

「ああ、それは知ってる。まあ、随分と長かったが」

「えへへー、狩りに負けたのが悔しかったので。それで、ここから二時間くらいの場所にそれらしきものを発見しました。ひらけた場所に不自然に大きな洞窟がありました。後ろには続いてないので、中は異次元になっているかと」

「近くに何かいたか? ダンジョン前には、ゲートキーパーと呼ばれる者もいたりする」

「そこまでは近づいてないんで、何とも言えないですけど……何か、嫌な感じはしましたかねー」

ダンジョン、それは神の贈り物、または試練とも言われたりする。
中は異次元になっており、難易度によって広さや階層は違う。
そこでは魔物や魔獣が跋扈し、宝や財宝を狙いに来た者達を待ち受ける。
そして、レアモノと言われるダンジョンにはゲームキーパーと言われる門番がいる。

「なるほど、お前の嫌な予感ってことは当たりそうだ。ならば、レアモノの可能性が高いか。そうなると、必然的に難易度も高くなると」

「どうします? 出直しますか?」

「……いや、下手に人数を連れて行っても良くない。ゲートキーパーがいた場合、無駄な犠牲が増えるだけだ。今いるメンバーで、ゲートキーパーだけは倒しておきたい。あいつがいた場合、そこは逃げられない結界となる」

「そうですねー。それじゃあ、ここに荷物を置いておくとして……誰でいきますか?」

「アイザック、俺、ユキノ、エミリア、ニール……獣人達には荷物を見てもらおう」

すると、俺の膝で寝ていたフーコが暴れ出す。

「……連れてけって?」

「コンッ!」

「……仕方ない連れていくか」

「コーン!」

守った末に答えを出す。
こっちに来てから、大したことしてないしな。
外にも慣れてきただろうし、ここらで自信をつけさせるのもありだ。

「いいんです?」

「まあ、甘やかし過ぎるのも違うしな。フーコ、ただし俺の命令は絶対だ。そして、俺達が助けてくれると思うなよ?」

「コンッ!」

その顔は『わかってるもん!』と言っていた。
どうやら、銀狐としての誇りは失ってないらしい。
これなら、連れて行っても良いだろう。

「それじゃ、決まりだ。カリオン、すまないが後を頼む。いつも悪いな」

「はっ、お任せください。いえ、我々では足手纏いになりかねないので。もっとお力になれればいいのですが……」

「いや、十分だ。警戒や索敵を行うのは神経を使うだろう。それに、人には向き不向きがある。お前達はお前達のできること、他の所は別の奴らが補う。俺が目指しているのは、そういう暮らしだ」

「主人……はっ、我々は我々にできることを全力でいたします」

「ああ、それでいい。んじゃ、休憩したらいくとするか」

すると、ユキノが身体を寄せてくる。
ふわっと甘い香りが鼻をくすぐった。

「な、なんだ?」

「えー? ご褒美はないんですかー? 私、夜通しで探索してたんですけど?」

「あぁー……なにがいいんだ?」

「では、膝枕を要求します!」

「へいへい、わかったよ」

「わーい! それでは失礼して……ぬふふ」

俺の膝に頭を乗せたユキノが不気味に笑う。
なんというか、美少女が台無しだった。

「変な笑い方をするな」

「し、仕方ないじゃないですかー」

「むぅ……私だって頑張ったのに」

「あん? エミリアどうした?」

「なんでもありませんわ!」

そう言いながらも、何故が俺にを寄せてきた。
そして、フーコまでもが。
終いには、ニールが何やらそわそわしている。

「へへっ、兄貴は大変っすね」

「主人は苦労しそうだ」

「……どういう意味だ?」

俺の問いに、二人が苦笑するのだった。

結局、俺はその場から一歩も動くことができなかった。