「おはよー」
「学校だりー」
「宿題終わった?」
久しぶりに学校に行くと、夏休み前とあまり変わらない教室の空気にほっとした。
「汐音、おはよ」
「おはよ!久しぶり」
人見知りの私にできた唯一の友達の菜都は、部活があったからか写真を見比べなくても分かるほど焼けていた。
「焼けたね」
「そー。汗かくと日焼け止め取れちゃってさ」
両腕を交互に見る菜都はテニス部に入っていて、よく大会に出ている。
「さすが、テニス部エース」
「やめてよ、くすぐったい」
嬉しそうに笑うから、つられて笑った。
「聞いてよ。大会、個人準優勝したの」
「え、すごいじゃん!てことは今日の始業式で表彰されるってこと?」
「うん。ステージの上で汐音の盛大な拍手、待ってるから」
学校の友達と話すのは久しぶりで、一ヶ月ちょっと会っていないだけなのに随分前のように感じた。
「汐音は夏休みどうだった?」
「課題と夢に追われてた。もう毎日机とにらめっこだったよ」
唯空と、今までで一番夏らしい夏休みを堪能したことは話さなかった。友達だからといって、全部話さないといけないわけじゃないし。
あと、話し始めると、最悪の場合一から十まで説明しないといけないからめんどくさい。
「相変わらず頑張り屋だね」
「そうでもないよ。一回投げ出したから」
「まぁ、そんなときもあるさ」
楽観的で、行きやすいだろうな。私も菜都みたいな性格で生まれてきたかった。
ないものねだりをしたところで、これに関してはしょうがないのだけど。
「私も連日部活ばっくれたことあったけど、その期間があったから今がある、みたいなところあるし」
何も反応しない私を励ますためか、背中をバンバン叩きながら笑った。
「そうだよね。ありがとう」
「うん。そうだよ」
弱っている風の私と、色黒になって元気な菜都。まるで体育会系の先生と運動音痴の生徒みたいだ。
「それよりもさ、このあとの始業式だよ」
「なんで?」
「表彰までに寝そうでさ」
「なにそれ」
どよんとした空気をにこやかに変える。
私の友達は魔法使いみたいな女の子。
「ねぇ、聞いてほしいことがあるの」
別にめんどくさくてもいいか。めんどくさいというのは、本当は思い空気にするのが嫌な言い訳でしかないのだから。
「うん。なに?」
廊下に並んで始業式に行くまでの数十分。
私には入院している幼なじみがいること。
この夏休み、その幼なじみが自宅療養で帰ってきて、久しぶりに遊んだこと。
夢を応援してくれていて、協力してくれていること。
そして、唯空の余命があとたったの五ヶ月しかないこと。
十まで聞かれる前に、全部話していた。全部話したはずなのに、まだ言うことがあると心が訴えていた。それがなんなのか、言ってはいけない、まだ誰にも話していない感情だとすぐに気づいた。
「じゃあきっと、今回応募する人の中で誰よりも素敵なものになるよ。汐音と唯空くん、ふたりで作り上げるものだから」
不思議とプレッシャーは感じなかった。それよりも、ふたりで作り上げると言われたことに胸がぽかぽかした。
ちょうど、唯空の命がこの世にある最終日の予想の一か月前が、このオーディションの結果発表の日だった。
「学校だりー」
「宿題終わった?」
久しぶりに学校に行くと、夏休み前とあまり変わらない教室の空気にほっとした。
「汐音、おはよ」
「おはよ!久しぶり」
人見知りの私にできた唯一の友達の菜都は、部活があったからか写真を見比べなくても分かるほど焼けていた。
「焼けたね」
「そー。汗かくと日焼け止め取れちゃってさ」
両腕を交互に見る菜都はテニス部に入っていて、よく大会に出ている。
「さすが、テニス部エース」
「やめてよ、くすぐったい」
嬉しそうに笑うから、つられて笑った。
「聞いてよ。大会、個人準優勝したの」
「え、すごいじゃん!てことは今日の始業式で表彰されるってこと?」
「うん。ステージの上で汐音の盛大な拍手、待ってるから」
学校の友達と話すのは久しぶりで、一ヶ月ちょっと会っていないだけなのに随分前のように感じた。
「汐音は夏休みどうだった?」
「課題と夢に追われてた。もう毎日机とにらめっこだったよ」
唯空と、今までで一番夏らしい夏休みを堪能したことは話さなかった。友達だからといって、全部話さないといけないわけじゃないし。
あと、話し始めると、最悪の場合一から十まで説明しないといけないからめんどくさい。
「相変わらず頑張り屋だね」
「そうでもないよ。一回投げ出したから」
「まぁ、そんなときもあるさ」
楽観的で、行きやすいだろうな。私も菜都みたいな性格で生まれてきたかった。
ないものねだりをしたところで、これに関してはしょうがないのだけど。
「私も連日部活ばっくれたことあったけど、その期間があったから今がある、みたいなところあるし」
何も反応しない私を励ますためか、背中をバンバン叩きながら笑った。
「そうだよね。ありがとう」
「うん。そうだよ」
弱っている風の私と、色黒になって元気な菜都。まるで体育会系の先生と運動音痴の生徒みたいだ。
「それよりもさ、このあとの始業式だよ」
「なんで?」
「表彰までに寝そうでさ」
「なにそれ」
どよんとした空気をにこやかに変える。
私の友達は魔法使いみたいな女の子。
「ねぇ、聞いてほしいことがあるの」
別にめんどくさくてもいいか。めんどくさいというのは、本当は思い空気にするのが嫌な言い訳でしかないのだから。
「うん。なに?」
廊下に並んで始業式に行くまでの数十分。
私には入院している幼なじみがいること。
この夏休み、その幼なじみが自宅療養で帰ってきて、久しぶりに遊んだこと。
夢を応援してくれていて、協力してくれていること。
そして、唯空の余命があとたったの五ヶ月しかないこと。
十まで聞かれる前に、全部話していた。全部話したはずなのに、まだ言うことがあると心が訴えていた。それがなんなのか、言ってはいけない、まだ誰にも話していない感情だとすぐに気づいた。
「じゃあきっと、今回応募する人の中で誰よりも素敵なものになるよ。汐音と唯空くん、ふたりで作り上げるものだから」
不思議とプレッシャーは感じなかった。それよりも、ふたりで作り上げると言われたことに胸がぽかぽかした。
ちょうど、唯空の命がこの世にある最終日の予想の一か月前が、このオーディションの結果発表の日だった。