――――秋が近付き、朝がひんやりとしてきた今日この頃。ちび蜘蛛たちのもふさはふかふかもふもふ温かくてありがたい。
そんなある日の朝。今日もいつの間にか部屋に真冬がいた。
「そう言えば、何で蜘蛛妖怪たちのもふ脚は3対なんだ?」
もふもふ。ちび蜘蛛脚もふもふしながら、もふもふ。
「……はい?」
ずっと気になっていた。画面の向こうのみんなもあれ??と思っていたんじゃないかな?
今日はせっかくだから、蜘蛛妖怪自身に突撃インタビューである。
蜘蛛の脚の謎を今、解き明かそうではないか!
「だってほら。ヒト型の脚と、腕と合わせたら全部で5対、10本じゃん」
蜘蛛は8本脚だろ?
ちび蜘蛛ちゃんたちも、おじいもそうだし……前に見た真冬の蜘蛛脚もそうだった。
もふもふ……もふもふ……他のちび蜘蛛をもふもふしながら数えても、やっぱり3対だ。
「蜘蛛の手足は元々10本ですよ」
「はいっ!?」
さらりと告げた真冬の言葉に驚愕。何それ新事実なんだけどっ!?
「正確には触肢と呼ばれる、人間の腕、手にあたるものが1対、脚が4対あるんですよ」
「はぇー、そうなんだ」
蜘蛛の脚は4対だが、それに加えて実は腕もあったと。そういや蜘蛛って器用だもんな、いろいろと。あれは手にあたる触肢を持っているからなのか。
「じゃぁ真冬たちのヒト型の腕は……触肢?」
「そうなります」
やっぱり。
――――――しかしながら。
もふもふもふ。
ちび蜘蛛たちは相変わらずもふい。脚がもふくないコも最近来てくれる。でもかわいいからいいかな。
「そう言えば、あのコは何蜘蛛?」
茶色と淡い茶色のメッシュの髪、あと背中から茶色と淡い茶色の縞々脚が出ているコだ。
「ユカタヤマシログモです」
「例の口から糸吐く蜘蛛ぉ――――――っ!?」
「ん」
ユカタヤマシログモちゃんがこくんと頷いた。
そんな感じで朝の談笑をしていれば、屋敷の蜘蛛たちがお膳を持ってきてくれた。お膳ってこう言う時にも便利だなぁ。
真冬も一緒に食べるらしく、納豆ご飯、お味噌汁に煮物、焼き魚と言うザ・和食。
「蜘蛛たちは納豆平気だね」
嫌がると思ってた。ちび蜘蛛たちがお膳の周りに集まる。でもお菓子がないのですぐに興味がなくなったらしく、お琴で遊び始めた。
ただ糸をポロンポロン鳴らしているだけなのに、俺より上手なの何でだろーねっ!?
「美味しいじゃないですか」
「まぁ、そうだけど」
それこそが真理。ご飯餃子も焼きそばパンもコロッケパンも、ポテサラサンドも同じ原理である。何故……と、思ってはならない。食え、そして味わえ。美味しければ……W炭水化物でも、全然イケるっ!
因みにちび蜘蛛たちはお腹が空いたら厨房に行って用意してあるおかずやおにぎりを食べているそうだ。
真冬は俺と1日3食食べているけどね。
桜姐さんや土蜘蛛シスターズのお姉さんたちもそうらしい。どうやら大きな妖怪たちは割りと3食食べるらしい。
朝ご飯を食べ終わり、歯磨きをして、真冬と別れて部屋に帰ろうとした時。
「あ、そうですビャク」
「ん?なぁに?」
今日はお仕事ないのでは?それとも急なお仕事かな。退魔師にはそれが多かった。ひょっとしてこちらでも……と、思ったのだが。
「このリードなんですけど」
「あ、何?そろそろ外してくれんの?」
すっかり俺のコスチューム的な立ち位置になってきたけど、でも首輪にリード……。そろそろ卒業したい。
「ダメですよ。迷子になったら帰って来れませんよ」
「まさかの迷子紐ぉっ!?」
ならもっとましな迷子紐はなかったのだろうか。
「これを軽く引っ張ると……」
真冬が軽くリードを引っ張ると、首輪とリードの付け根部分がかちりと鳴る。
「何これ」
「こうすると、私の元に居場所が届きます」
「何その便利アイテム――――――っ!?」
「もしもの時は、これを3回、引っ張ってくださいね」
「あ――……うん」
何か、実家では俺お兄ちゃんなのに、真冬といると俺の方が弟みたいー。いや、ねえねからすれば俺は弟だけどな。
「何かお兄ちゃんみたいだな」
「兄弟バディですか?面白いですね。にいたまって呼んでみてください」
「いや、何でやねんっ、にいたまっ!」
「サービス良すぎませんか?」
「これでもパパ、ママ、パピーとマミーを極めてきた俺だ」
これくらい、造作もない。
「では、こちらにも」
どこから連れてきたのか、真冬の腕の中にはちび竜ちゃんがいた。実は結構おじいちゃんらしいのだが、真偽は未だ不明……と言うか、幼児!見た目が幼児なんだよ!?
仮に真冬の言っていることがウソだったら、俺、恥ずかしさでどうにかなってまう~~っ!
「にいたま、言うヨロシ」
「げはぁっ」
まさかのちび竜ちゃんからのリクエスト~~っ!?
「にいたまにいたま~~」
いや、それだと俺がかわいいちび竜ちゃんににいたま言われてるみたいー。
「おれ、おじじに言ってごらん?」
こてんと首を傾げるちび竜ちゃん。
真偽はどっち――――――っ!?
「に、にいた……」
「のう、人の子よ、子竜相手に何をしておる?」
その時、タイリクユウレイグモじいじが通りかかったのだ。
「いや、でもこの子2000歳のおじいちゃん竜なのでは?」
「生後2000日の子竜ぞ?」
「はい――――――っ!?」
真冬とちび竜ちゃんをハッと見れば。
「ぶふふふふっ、今回は長く騙されてましたねっ」
「ケラケラケラッ」
「んが――――――っ!?」
んまーったく、悪戯好き妖怪たちめぇ~~っ!!!