私は抗議の意味を含めてレオのほうを見るが、彼はにやりと笑うだけ。

「レオ様、私は婚約はまだ……」
「いいだろ? どうせ遅かれ早かれそうなるからな」

 どうやら彼の中私の負けは確定しているらしい。
 そう思ったら耳元で彼に囁かれる。

「国王にはまだ正式な婚約ではないことは伝えてある。安心しろ」
「でも、皆さんが……」
「これだけ俺が言えばある程度の王宮の人間がお前に危害など加えることはないだろう。王族に不満を持つ者も大っぴらには動かないだろうしな」
「レオ様……」

 そこまで考えていて言ってくれたの?
 まあ、かなり強引なんだけども……。

 じっと彼の顔を見つめてしまっていたために、がしっと顔を掴まれて顔を近づけられる。

「もしかしてもう惚れた?」
「──っ! 惚れてません!!」

 私はそのまま彼の手を払いのけて廊下をぷんすかしながら歩く。



◇◆◇



 レオの言葉が効いたのか、王宮では陰口もほとんど言われなくなったし過ごしやすくなった。
 それよりもなんだか王宮の外が騒がしいような気がして、私はそっちのほうが気になっていた。

「ディアナ?」