「かしこまりました」

 アルベルトは何度かに分けて密偵に調査させた様子をユリウスに報告した。

「早馬で伝えた通り、ユリエ様がコーデリア国にいるのは確かです」
「誘拐されたのか?」
「イレナからの報告と突き合わせてもやはり誘拐されたのだと」

 その言葉にユリウスは、怒りを押し殺して状況報告を聞こうと耳を傾ける。

「しかし、なぜかユリエ様に逃げる素振りがないため、なにかしら意図があるものと思われます」
「逃げる素振りがない?」
「はい、第一王子とも何かに怖がるような様子ではなく普通に話しております」
「…………」

 ユリウスは口元に手をやって少し考えると、何かに気づいたように語り出した。

「もしかして聖女召喚について調べている? あるいは帰還方法について探している?」
「ユリエ様なら可能性は十分にあります」
「その可能性が高いな」

 報告を全て終えたアルベルトはユリウスに礼をしたあと、再び仕事へと戻った。
 その場に残されたユリウスは目を閉じてソファでうなだれる。

(調査をしているかもしれないが……それでも心配すぎる)