「私の母は政子(まさこ)ただ一人なのよっ! 肉じゃがもカレーも豚肉で作る節約家、でもそれがいいうま味を出すことを知っている! パンツに穴が開いても、靴下に穴が開いても履き続ける!」
「あなた何を言っているの?」
「でもそんな母は毎日遅くまで働きながらそれでも朝早く起きてお弁当を作って送り出してくれた、優しい母だった。そんな優しい母が私は好きだった。それをあなたはなんの理もなしに奪ったのよっ!!!」

 私は息を切らせながら目には涙を浮かべて王妃に母──政子への愛を誓った。
 突然の母と離れなければならなかった、この苦しみがお前にわかるのかっ!!

「エリク様は白状しましたよ。あなたが王宮魔術師に聖女召喚の儀式をおこなわせて私を召喚したこと。そして、第一王位継承権を得るために私を婚約者として、そしてこの世界で18年生きてきたという偽りの記憶を植え付けたこと」
「なっ! エリク……あのバカ息子……」
「あの人は私を少しも愛していなかった……」

 私は言っていて悲しくなるが、ぐっとこらえる。

「息子の教育が甘かったですね、王妃」
「──っ! ユリウス王子」