さらにご公務も非常に優れた才覚を発揮されて全うされておりますゆえ、側近の方や宰相閣下からのご信頼も厚くひっきりなしに「殿下」「殿下」と呼ぶ声が王宮に響き渡ります。
 そんなエリクさまですから、二人でのデートもままならず、わたくしは少し寂しい思いをしておりました。

(ご公務が忙しいのは仕方ないけれど、5日も会えないと寂しいものですね)

 私はいつも通り王宮にて王太子妃教育を終えた後、立派な絵が飾られた廊下を歩いていました。
 すると、向こうからシルバーの髪に碧眼の美しい第二王子ユリウス・リ・スタリー様がいらっしゃり、わたくしはカーテシーでご挨拶をします。

「今日も王太子妃教育ですか?」
「ええ、まだまだうまくできないことも多々ございます。精進しております」
「おや、ユリウスではないか。こらこら、兄の婚約者をかどわかしていたのか?」

 後ろからエリクさまがやって来られ、そのお姿を見てわたくしは再びカーテシーでご挨拶をします。

「いえ、そのようなおつもりでは」
「そうか? まあいい。そういえば母上がお呼びだったぞ」
「……かしこまりました。すぐに行ってまいります」