私はその誘いに導かれながら腰を下ろした。

 持ってきたリュックを木の幹にもたれかからせると、その中から水筒とお饅頭を取り出す。
 お重に詰められたお饅頭は何種類かあるのか、白いのや緑のがあった。
 焼いてあるのか表面が少しきつね色になっているものもある。

「どうぞ」
「ありがとう」

 私は緑のお饅頭をとると、口に運ぶ。

「──っ? よもぎ?」
「そう、香りいいでしょ?」
「うん、あんまり昔は好きじゃなかったけど、今は好きかも」
「あんた最近はよくよもぎ餅食べてたからね」

 あ……そういえばそうだったかも。
 なんだか昔はこのクセが嫌だったけど、今はこのちょっとほろ苦い感じが好き。
 中から白あんが出てきて、その甘さが口いっぱいに広がっていく。

 甘さで占拠された瞬間、横からコーヒーを差し出される。

「今思ったけど、コーヒーなんだったらお茶じゃないの?」
「え~だってお母さんコーヒー飲みたい気分だったから~」

 そんな茶目っ気たっぷりに返してくるお母さんは、ああ、いつものお母さんだな、なんて思う。