彼は私がずっと元の世界に戻りたいと思っていたことを、傍で見ていた。
 だからこそ私の背中を押してくれようとしている。

 けど、私は、この世界であなたという好きな人に出会ってしまった。
 この薬で元の世界に戻れたとして、こちらに帰って来れる保証もない。

「ユリウス様。母は……いえ」

 私はお母さんの状態を言おうとしてやめた。
 だって、この世界に来る数日前に母は倒れたばかりで、最近も少し病気がちになっていた。
 一度病を患ってから、その病は治りはしたが、お母さんはよく体調を崩すように……。
 そんな様子を伝えたら、絶対に元の世界に戻れと言われる。

 今、私、最悪だ……。
 家族と好きな人を天秤にかけて、迷って……。

 私の小瓶を握る手は少し震えていた。

 私はどうすればいい……?
 そう小瓶に問いかけても教えてはくれなかった──



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【ちょっと一言コーナー】
ユリエちゃんは異世界で海鮮料理が好きになってきています。
元の世界ではあまり食べたことがない子でした。(お母さんが肉料理メインに出す人だったので)