放課後、進路指導室を出た私は、まだぎこちなさを隠せないまま継父を玄関まで見送った。

 体育祭のあと、私の気持ちを知ったお母さんはちょっと困惑していたけど、意外にもあっさりと私の進学を受け入れてくれた。

 さらに、意外といえば継父の後押しも意外だった。なるべく親に迷惑かけないために近くの専門学校を希望するつもりだったけど、継父は本格的に学べるようにと大学進学をすすめてくれた。

 おかげで、私は今慌ただしく受験生の日々を過ごしている。進路指導の先生からも、このまま頑張れば大丈夫だと言ってもらえた。

「みのちゃん、息抜き行こうよ」

 教室に戻ったところで、友人たちに声をかけられた。体育祭以降、すっかり私の状況は激変し、「姐さん」とからかわれることもあるけど、今では友人もできた。

「ところでみのちゃん、イラストのモデルは決まったの?」

「あ、あれね、実は見送りにしたんだ」

 何気なくふられた話題に、私はちょっと引きつりながら笑って返した。先日、某コンテストの話題を教えてもらい、参加しようかと考えたけど、人物画ということでやめることにした。

「なんで? もったいないよ。みのちゃんなら賞とれるかもしれないよ?」

「賞をとれるかはわからないけど、人物画はちょっと、ね? もう先約があるから描けないんだ」

「えー、どういうこと?」

 私の意味深な返事に、なにかを感じた友人たちのテンションが一気にあがっていく。矢継ぎ早に質問攻めしながら盛り上がっていくなか、私はちょっとだけ胸の奥が痛くなるのを感じた。

「まあ、言えるとしたら、好きな人、じゃなくて好きだった人、かな。その人と約束したから、夢が叶うまで人物画はお預けにしてるんだ」

「なにそれ? ちょっと詳しく教えなさいよ!」

 さらなる私の意味深発言に、友人たちは盛り上がりながら私に抱きついてきた。

「それはね、私の初恋だから教えられないよ」

 抱きつく友人をふりほどき、満面の笑みを浮かべて伝えると、私はダッシュで下駄箱を目指した。

「こらー、みのちゃん、逃さないからね!」

 逃げる私に、奇声をあげながら追いかけてくる友人たち。

 その友人たちに早く早くと手招きしながら、ずっと夢見ていた毎日が現実になったことを実感しながら、私は空を見上げてゆっくりと笑みを浮かべた。

 ――了――