~教会・フランク修道院~

 時は遡る事修道院を見る2秒前。

 ――ズガァァァンッ!!
 この破壊音とほぼ同時に、俺は修道院の方を振り返っていた。

 目に映るは半壊した修道院。アクルがやった事は一目瞭然。

 辺りに散らばる建物の瓦礫。外にも関わらず砂埃で視界が悪くなっている。
 修道院を破壊したアクルはその場で仁王立ちしていた。

「何やってんだこの馬鹿ッ!」

 俺が後ろからアクルに声を掛けたが、アクルは何故か砂埃が舞うある一点を見つめていた。

「ん? どうした?」

 アクルが送る視線の先。徐々に砂埃が晴れて視界がクリアになっていく。

 すると、俺達の視界に何人かの人影が見えてきた。その人影の正体は3~7歳くらいの数人の子供達の姿。子供達は部屋の隅っこに固まり明らかに怯えている様子だった。

 恐らくこの子達はこの修道院で暮らしている子達であろう。

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「――パパ……熱いよッ……!」
「助けて……パパ」
「あなた……ッ!」

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 怯えた子供達が、あの日のミラーナやジェイルの姿と重なった。

 遂に夢じゃなくても見る様になったか……。

「え~んッ……!」
「怖いよぉ!」
「お、おじさん達誰……⁉」

 こんな見ず知らずのオヤジと化け物が入ってきたらそりゃ怖いよな。

「安心しろ。もう大丈夫だからよ。オジさん達は悪者じゃない」
「でも、あっちにいるモンスターが凄い怖い顔してるよ!」
「助けてよおじさんッ……!」
「大丈夫だって。泣かなくていいから落ち着け。……おいアクル! 子供達にそんな顔するんじゃねぇ。怖がってるだろ!」

 お前も親なんだからそれぐらい分かるだろ全く。

「“関係ない”……」
「ん、 何か言ったか?」

 アクルが小さな声で何か呟いた様だが、俺には全然聞こえなかった。
 
 アイツは確かに人間不信ではあるが、流石にこんな小さな子供達に手を出すことは無い。
 当たり前にそう思っていた矢先、まさかの一言が俺の耳に届いた――。

「どけ。こんな所にいるなんてどうせ密猟者達のガキだろ。殺してやる」

 まさかとは思った。

「あ"ぁ?」

 まさかとは思ったが、どうやら聞き間違いでもねぇらしい。

「だからどけとって言ってるんだよッ! オラ達の森で好き勝手したのだからな、自分達の家族が殺されても文句を言う筋合いはない筈だ!」
「子供だぞ……。テメェ本気で言ってんのか?」
「だったら何だ」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は即座に戦闘態勢に入っていた。

「やっぱどうしようもねぇ化け物だったか」
「人間など信用出来ぬ」

 次の刹那、魔法を放つ構えに入ったアクルに対し、俺も奴目掛けて斬りかかった――。

「何時までも昔の事をネチネチ言ってんじゃねぇ――ッ!」
「黙れ――ッ!」

 アクルの魔法。
 
 俺の攻撃。

 互いの攻撃が相手に届くのはほぼ同時ッ……『――ズガァァンッ!』

「「……⁉」」

 気が付くと、俺とアクルは数メートル吹っ飛ばされていた。

「痛ってッ……!」

 は? 何だ?
 アクルの攻撃じゃねぇよな……?

 正面にいるアクルからではなく、“何か”に横から攻撃された。

 突然の出来事に一瞬困惑したが、状況を把握しようと辺りを見渡そうとした瞬間、その何かを放った“犯人”が現れた。

「――2人共邪魔デス!」
「リフェル……⁉」
「……」

 そう。俺とアクルを突如攻撃してきたのはリフェル。
 
 “何故だ?”と、俺が聞くよりも早くリフェルが語り出していた。

「何をしてイルのデスか? 私は無駄ナ事をスル非効率が1番嫌いなのデス。
目的は地下のオークション会場を潰す事でショウ。ソレなのに、何故一体無意味でメリットの無い争いをシヨウとしてイルのデスか。まさかコンナ所で喧嘩を始メルなんて私は少し驚きマシタ。アナタ達の馬鹿さにハ心底呆れマスよ!

ソレに、たった今起きヨウとしていたジンフリーとアクルの馬鹿喧嘩ヲ計算スルと、現状コレは小便をスルよりも時間が無駄デあり、世界中で最もクソな不利益しか生み出さナイ最低な選択デス」

 怒っているのか呆れているのか……いや、多分両方。
 感じた事の無いリフェルのオーラに圧倒された俺達は、まるで何事も無かったかの如く引き続き速やかに地下を目指す為動き出したのだった――。

「リフェル。地下に行く前にこの子供達を安全な場所に避難させてくれ。それと、他にもう子供はいねぇか確かめてくれ」
「分かりマシタ」
「オラは先に行く」

 リフェルはこの場にいた子供達と一緒に、オークションと全く関係の無い教会と修道院の関係者達も魔法で避難させた。

「ありがとうリフェル。俺達も行こう。またアクルを追わないと直ぐに暴れ出すぞ」
「次のトラブルまで12秒デスね」
「おいおいおい……!」

 俺とリフェルはアクルに続き、フランクゲートと呼ばれるオークション会場へ続く階段を降りて行った――。