その日もいつものように、パパの遅い帰宅から喧嘩が始まる。
普段ならそこに口を挟むことはなく、そっと家を出るんだけど、その日の私はなんだかイライラモヤモヤしてて、ついひと言。
「あーっ!もう、うるっさい!」
そう言ってしまえば、もう止まらなかった。
「なんでうちのパパとママは仲良くしてくれないの?他の家の子は家族で旅行だって行くのに、うちの家ではそんな話があがる空気すらない。
いつも顔を合わせても全く会話しないくせに、パパが遅い時だけこんなにも言い合って。普段から話しておけばパパが遅い日だってわかるかもしれないじゃん。
なんでそれくらいの会話が出来ないの?
ママはあの時のこと許したから一緒にいるんじゃないの?それなのに毎回あの話持ち出して怒って、なんなの?しつこい。
パパは自分が原因だってわかってる?全く反省した様子が見られないデカい態度ばかりとって、私たちがあの女のせいでどんな思いしてるか少しでも想像したことある?
ふたりが喧嘩してるときの私の気持ち、考えたことあるの!?
もう、パパもママもだいっきらい!」
私がまくし立てるのを驚いた顔をして見ていたふたり。
先にママが口を開こうとしたのを見て、私はふたりが口を開く前に勢いよく家を出た。
その勢いのまま何も考えずただ全力で走る。
でもたいして体力も無い私は、すぐに息切れして足を止めた。
「……あ、上着忘れた」
家を飛び出てきたから上着を着る余裕なんてなくて、真冬の夜には相応しくない格好で出てきてしまった。
さすがに寒すぎる。
けど、あんなに言っておいてすぐ戻る気にもなれない。