その日の夜も、我が家のリビングは騒がしかった。
「ずいぶんと遅かったわね」
「トラブったから残業しないといけなくなったんだよ」
「本当?他の女のところに行ってたんじゃないでしょうね」
「はぁ?違うって。疲れて帰ってきてんのにそういうのやめろよ。余計疲れるわ」
「でもそうやって言って何回も女の人と会ってたじゃない」
「うるさいなぁ、いい加減にしてくれ。
いつまでそんなこと言ってるんだ?もう終わったことだろう」
「終わった?そんなわけないでしょ!
信じてたのに嘘をつかれてたのよ!?」
「だからそれは謝っただろ!」
「謝って済むと思ってるの?」
「はぁ。もうやめてくれ。疲れてるんだ」
「私だって疲れてるわよ!
朝早く起きて、お弁当作ってパート行って買い物して帰ってきて、またご飯作って!」
また始まった。
最近はパパの帰ってくる時間が遅いと、いつもこうだ。
原因は3ヶ月前にパパの不倫が発覚したこと。
残業だと言って女の人と会ってたらしい。
「寒っ」
私はそっと家を出た。
少ししてから戻れば大抵は落ち着いていて、喧嘩を見なくて済むから、こういう日は夜道を散歩する事にしている。
そういえば、今日もあの幽霊さんはいるだろうか。
あの日はたまたま居ただけだったかもしれないけど、夜道を誰かと話しながら歩くのは想像以上に楽しくて、また会いたいと思ってしまう。