「志田さんが僕の隣の席?」
「うん、そうだよ」
「はぁ、良かった」
「良かった?」
「うん。学校に通うのは久々で、ちょっと緊張してたから、知ってる人で安心した」
学校通うのが久々って、長期休み以来だからってことかな?
「緊張してたの?」
「見えなかった?すごくしてたよ」
「全然そうは見えなかった。さすが美形」
「ふはっ、美形は関係ないでしょ」
思わず笑ってしまった、というように笑みを見せる彼をみて、自分の中の“幽霊さん”像が変わった気がした。
こんな取り繕ってない笑顔を見るのは初めて。
「……笑ってる」
「ん?何か変?」
「笑ったの見たこと無かったから」
「えぇ、そうだっけ」
「いや、そんなことないんだけど、そんなふうに笑ってるのは初めて見た」
いつも穏やかな顔はしてたし、たまに笑みも見せてくれたけど、自然に出た笑顔なんて見ることがなかった。
まぁ、たった3週間程度の彼しか知らなかったから、そんなことがあってもおかしくはないんだけど。
「僕も君の晴れた顔を見るのは初めてだよ。いつも悩んでるって顔をしてたから」
「うん。大城さんのおかげで、悩みが解決したんだ」
「えっ?僕、特に何もしてないよ?」
「大城さんはそう思ってても、してくれたの。
ずっと、悩みが解決した報告とお礼を言いたかったんだ。ありがとう」
やっと言えた。
「僕の方こそありがとう」
「うん?なんで?」
「僕も志田さんのおかげで悩みが解決したんだ。君は何もしてないと思うかもしれないけど」
「そっか。私も役に立ててたならよかった。
私たち、ちゃんと必要な時に必要な人に出会えたんだね」
「だね」