今日もいるだろうか。

僕は先日会った彼女が気になって、最近は度々夜中に家を抜け出していた。

僕のことを最初から、この世にいない者として思っている彼女相手だと、話しやすかった。


「幽霊さんは、思い残したことってある?」


「思い残したことかぁ。
んー、両親に“ありがとう”って伝えたいかも」


「いいご両親なんだね」


「うん。僕が息子なんて申し訳ないな」


「なんで?早く死んだから?」


「僕が“普通”に生きられなかったからかなぁ」


「普通って何だろうね。
たとえば、こうやって幽霊と話してる私や、幽霊になってる幽霊さんは、普通なのかな?

あっ、もしかして幽霊ってその辺にたくさんいる?」


「いや、いないと思う」


実際は見えないから知らないんだけど。


「良かった。いたとしたらちょっと怖いかも」


「僕と話してるのに?」


「幽霊さんは怖くないから。
でも他の幽霊はどうか分からないじゃん?」


確かに。
僕も幽霊なんて見た事がないけれど、なんとなく幽霊は怖いものだと思っていた。
でも多分、悪い幽霊も悪くない幽霊も、可愛い幽霊も怖い幽霊もいると思う。

そう考えると、“普通は幽霊は怖いもの”っていう“普通”って何って話になる。


「普通なんてものはなくて、それぞれ違う人間が居るだけなんだね、きっと。
違う人間の同じ部分を見つけて、“普通”って言ってるだけなのかも」


「……幽霊さん、難しいこと言うんだね?」