僕はいじめにあっていた。
何が原因だったのか、暴言をはかれるところから始まり、終いには存在しないものとして扱われた。
そして学校に通うことをやめた。
それから何ヶ月も部屋にひきこもっていたのに、その日はなぜかふいに外の空気が吸いたくなって、家族も寝静まった深夜にそっと家を抜け出した。
久々に見た空を、星を見つめていたら、視線を感じた。
こんな夜中に女の子がひとり。
僕のことを見ている。
「君には僕が見えるの?」
大半の人間にとっては当たり前の質問かもしれない。
けど、僕にとってそれは当たり前じゃなかった。
彼女は僕という人間を真っ直ぐに見つめ、当たり前のように言葉を返してくれた。
それはとても久しぶりの感覚で、なんだかくすぐったくて、嬉しかった。
流れで幽霊という事になったのも都合が良かった。
それなら詮索してこないだろうし、されたとしてもごまかすことができる。
それに、そのうちまた同じように存在しないことにされるのなら、そもそも存在しないはずのものにしておけば、以前ほど傷つかないのではと思った。