ムラ村さんと出会って半年ぐらい経ったころ。
 僕は毎日、彼女のことばかりを考えていた。
 そう、気がつけば、僕も惚れていた。
 つまり、相思相愛なのだろう。

 席替えして、ムラ村さんが前の方の席になっても、僕は暖かく後ろの席から彼女の小さな背中を見つめる。
「この想い……届け!」
 いや、もう彼女も僕を見つめている……気がする。

 そんなことを考えていると、秋になり運動会が始まる。
 ある日、練習を体育館でしないといけなくなった。

 着替えるのが早かった僕とムラ村さんは、二人きりで体育館にいた。
 まだ他の生徒たちと先生は来ていない。

 暇そうにしていたムラ村さんは「ねぇ、童貞。これ見てだぎゃん」と僕にあるものを指差す。
 それは体育館の窓近くに備えられていた、大きなカーテンだった。

「それがどうしたの?」
「なんかぎゃ。ドレスに見えないだぎゃ?」
「え? カーテンが?」
「そうだぎゃ。ちょっと見ててだぎゃん」

 そう言うと、ムラ村さんはカーテンの中に潜り込む。
 身体をくるむように巻き付けると、「ばぁ」と小さな顔を出す。

「どうぎゃ? ドレスぽくないぎゃ?」

 言われてみると確かに、ドレスに見えなくもない。
 女の子ってのは、なんにでもおままごとにするのだなと、思った。

 カーテンには裏地があって、銀色のツルツル生地。サテンと考えてもらえるとわかりやすい。
 ムラ村さんは、楽しそうにしている。
 今度は裏地を表にして、身体にまきつけ、「どうぎゃ?」なんてドヤ顔する。

「こ、これは……」

 ツルツルピカピカに光ったドレス。
 そして、カーテンの合間から見えるのは、細い脚と紺色のブルマ……。

 何か別の扉が開く、音が聞こえてきた……。

「ねぇねぇ~ 童貞! コレ、いいだぎゃん? でも、童貞には貸してやんないだぎゃ!」
「う、うん……別にいいよ」

 僕はそんなことより、ツルツルピカピカ生地の隙間から見えるブルマ。股間から目を離すことができない。
 あれだ。
 当時ドラマなんかで、流行っていたヤツだ。
 彼氏の家にお泊りした女の子が、大き目のYシャツをパンティー一丁で、料理する……みたいなデジャブを感じる。
 
 健気にカーテンで作ったドレス、あざとく見せつけるブルマ……。

 まさか!? この子、僕に惚れていて。尚且つ、結婚したいのかもしれない!?