僕が18歳になった年のこと。
 親父に勧められて、車の免許を取ることになった。

 何度もミスを起こしては補講を受けていたが、年末ごろには仮免許をゲットして。
 実技試験が終われば、あとの勉強は学校が用意したおまけの授業みたいなものだ。

 何千万円もするコンピューターを使用して、事故を避けるトレーニング。
 RV車の宣伝。それから事故が起きたときに学んでおく、人命救助の講習。

 二人一組で、マネキンを使用し実際に、唇を重ねて息を吹き込むのだ。
 一定量、息を吹きこむとマネキンの胸が光る仕組みだったと思う。


 僕は高校の入学式で出会った女子高生。
 桃山(ももやま) 処女子(しょじょこ)さんのことが気になっていた。
 そして、あちらも僕が気になって仕方がないのだろう。

 だってこれ見よがしに、僕にヒップを見せつけるのだから。
 わざわざ僕の前を歩いては、腰を振る……。

 仕方ないから、免許を取って、車を買おう。
 そして、デートに誘い出し、カーおせっせしようと考えていた。
 だからこんな勉強なんて、どうでもいいと鼻をほじっている。

 僕とペアを組んだのは、真面目そうな男の子だった。
 彼がマネキン君に「ブーッ!」と息を吹き込んでいる間、僕はマネキンの胸を両手で押す。
 餅つきのように、ペアで繰り返すのだ。
 何が楽しくて、野郎の接吻を見なきゃならないんだ……そう思っていた瞬間だった。

 反対側にいる女の子チームが目に入る。
 いや、正しく表現するなら、ひとり女の子……の下半身だ。
 当時はギャル全盛期、大人しい女の子でも、ミニスカと厚底ブーツが流行っていた。

 たぶん、この子はそんなにギャルではないと思う。
 講師のおじさんが、事前に「人命救助の講習だから、女性は露出を控えてください」と伝えていたのに。
 うっかり忘れていたのだろう。
 それに見せパンとかで、対策しているのだろうと思ったが。

 この子は完全に見せるパンティーではない!
 ピンク色だっ!

 それからの僕は、興奮してしまい、マネキン君が骨折するぐらい胸を圧迫してしまった。


 数か月後、無事に免許を取得した僕は決意した。
 早く車を買って、桃山さんとカーおせっせをしようと……。