あれは、高校の入学式だった。
息子の晴れ姿を見て喜んだ親父が、頼んでもいないのに。
近くにいた女性へ声をかける。
「すみません。ちょっと、二人の写真を撮ってくれませんか?」
と頼んだ相手は、僕と入学式で一緒だった可愛い女子高生……のお母さんだ。
「いいですよ」と快諾すると、僕と親父を校舎の前に立つように勧める。
正直いい歳した野郎たちが、二人で肩を並べるのは恥ずかしい。
持ってきたカメラが、インスタントカメラということもあって、撮影しても確認ができない。
だから、相手のお母さんは不安だったようで、何枚も写真を撮り直してくれた。
何度も、何度も、撮影する度に、僕はとあることに気がつく。
それは……。
撮影しているお母さんの隣りに立っている、女子高生だ。
僕だけを見て、めっちゃ笑っているのだ。
別に待っている間なら、視線は他に向けるか、携帯電話でもイジっていいだろう。
なのに、僕から視線を離さなず、ニコニコと微笑んでいる。
(はっ!? これはまさか……一目惚れというやつか!? また罪深いことをしてしまったな。入学式早々、ひとりのJKを落とすなんて)
僕は彼女の気持ちを知ってから、というものの。
ずっとJKちゃんの顔を見つめていた。
これはもう、相思相愛というものだ。
だって、未だに僕の顔を見ながら、ニコニコ笑っている。
僕はその気持ちに応えるよう、彼女の瞳をじっと見つめる。
よく見れば、大きな瞳に童顔。
低身長なわりに、安産型……。
その時、僕の身体に凄まじい衝撃が走った。
(ビビッときた! 間違いない、この子。僕と結婚するに違いない!)
撮影が終わって、お互い軽く会釈をする。
しかし、僕はこの日以来、彼女のことを目で追いかけるようになった。
主に登下校中、彼女の後ろ姿を。
まあ自ずと、安産型のヒップとか、ヒップばかりを拝んでいたのだが。
1年生で彼女をゲットして、婚約か……罪深い男だ。