福岡に転校して、一年ほど経ったころ。
 森盛 マリナさんや植田 下子さんという、ダブルヒロインを手に入れそうだった僕だが……。

 残念なことに、中学校に行く意味を見出せなくなってしまった。
 二人の嫁候補がいるというのに、学校へ行くことを辞めたのだ。
 悪く言えば、不登校。

 ~それから数年後~

 僕は別の中学校へ転校し、無事に卒業。
 そして、もう二人の顔を忘れ出したころ。

 真面目だけど僕が好きすぎて、おっちょこちょいな植田 下子さんの話は、友達から何度か聞いていた。
 成績優秀だった植田さんは、県内でも有数の進学校へ入学。
 きっと、僕という未来の夫がいなくなり、ショックを受けたから、勉強に打ち込んだのだろう……。

 もう一人のヒロインである、森盛さんについてだが。
 友達に聞いても、なぜかみんな沈黙を貫いていた。

 彼女も真面目な方だったし、きっとおバカな僕とは違い、頭の良い高校へ進学しているんだろうと思い込んでいた。
 あの日までは……。


 とある日の夕方。
 僕はレンタルショップに、借りていたアニメを返そうと、自転車で店へと向かった。
 自転車置き場に、止めようとしたその瞬間。
 僕はその場で立ちすくんでしまう。

 大きなバイクの下に座っている、金髪の少女と目が合ってしまう。
 ジーパンを履いているとはいえ、あぐらをかいて座っている。
 僕に気がつくと、鋭い目つきで睨んできた。
 
「あぁん?」

 僕は人生で初めてのカツアゲを食らうのかと、身構えたが。
 その大きな瞳を見て、すぐに気がついた。
 同じ中学だった森盛 マリナさんだ!

 身なりは変わってしまったが、体型を見ればすぐにわかる。
 ヤンキーぶっているけど、低身長でロリ体型。なのに下半身は巨尻。
 あの大きな瞳からは、輝きが失せている……。
 そして、髪型も激変していた。パーマをかけたボンバーヘアー。

「あ、あの……」

 僕のことを覚えているか? と尋ねようしたが、森盛さんらしきヤンキー女子は、舌打ちする。

「チッ……」

 彼女は僕を忘れてしまったのか?
 あんなに、僕へアプローチをかけていたのにっ!?

 それにこんな大きなバイクを、どうやって運転するのだろう? と首を傾げいていたら……。
 レンタルショップから、大柄の男が出てきた。

「よぉ~ マリナ、待たせたな」
「遅いって」
 
 嫌そうな態度を取っているのに、その男の腕に絡みつくマリナさん。
 僕のことなぞ眼中になく、彼が運転するバイクの後ろに跨り、走り去る。

 そこでようやく、気がついた。

「わかったぞ!」

(ごめん、森盛さん。僕のせいなんだね? 僕が中学校に行かなくなったから、失恋してグレちゃったんだ……。よっぽど、僕が好きだったんだ。きっと結婚したいほどに……)

 なんて、罪深い男なんだ……。