三月も半ばを過ぎたある日。

 卒業証書を入れた筒を手に、俺たちは芽吹いたばかりの桜に挟まれた道を進んだ。

 背後に残した体育館の前には大勢の卒業生とその家族、そして在校生が集まっていた。

 いるのは五人だけだった。

 俺たちの世界は狭かった。

 校門の外は広かった。

 きっとここからもっと広がっていく。

「皆、愛してるぜ」
 俺が告げると、四人が振り返った。

「そりゃどうも」
 亮平(りょうへい)は抑揚のない声で返した。

「知ってるよ」
 侑馬(ゆうま)は当然だというように頷いた。

「嬉しいね」
 慶之(よしゆき)は鼻で笑った。

「あたしもだよ」
 リリイは思いっきりの笑顔を浮かべた。

 世界は愛に満ちていた。