来てしまった………夜の繁華街に。後悔するなんてことはなく普段とは違った世界に胸を躍らせる。たまに人とぶつかって舌打ちされるが全く気にならない。現在7時48分。んあと2時間はいけるな。何をしようか迷ったとき声をかけられた。
「あの!!!」
ナンパ?と思うがちょっと違う気がする。
「何でしょうか?」

「あのっ俺たちバンド組んでて!!スパイラルって言うんですけど!!急遽来れない団体があって!ライブ来て下さいっ!!」

断れない。
「いーですよちょうど暇ですし。」

「ありがとうございますっ!」




人生初のライブハウス。照明ってこんなに眩しいんだなーって感じる。なんかいきなり暗くなり突如シャウトが聞こえる。
「みなさーん!こんにちは!スパイラルのギターとボーカルのタイガです!」
とギターを鳴らすタイガさん。結構雰囲気尖ってんな。ワイルド系のイケメンだ。
「ドっドラムのリョウです!よろしくお願いしますぅ」
とドラムを叩く。オロオロした態度とは裏腹に技術が半端なく高いことが伺える。顔キレイだなー。
「ギター専でーす♪よろしくね♪ミツキだよ」
いかにも女の子慣れしてそうなミツキさん。手を振ってファンサしている。
「ベースのリオです。本日はお越しいただきありがとうございます。」
…………え?陽野崎くんにそっくりなんだが?名前なんだっけ?確か李央だった気が?
まさかのご本人様ですか?まあいーや。ここからならステージから離れているしバレることはないな。

曲が始まる。とてもリズミカルなドラムの音から低いベースと華やかなギターが混じり合う。そこにタイガさんの男とは思えない高いハスキーボイスで歌い出す。結構レベル高いなぁ。でもライブは途中で最悪に終わった。なぜなら、曲がサビに入る前にドアの前で
怒鳴り声が聞こえたからである。スピーカーや楽器の音があるなかでも聞こえた。
「李央!お前こんなところで何をしているんだ!!」

父親だと思われる。陽野崎くんは楽器でその声を消そうとするが他のメンバーの楽器は止まっている。この空間はベースの低い音とピリピリとした空気に包まれた。
「帰るぞ!!」

「うっせ 帰んねーし」

怖くて逃げたくなるがドアの前には陽野崎くんの父親らしき人がいる。
「邪魔ですよ」
オーナーさん!!!神様ですか?
「そもそもコイツが……」
オーナーさんと陽野崎くんの父親らしき人が口論してる間に抜け出そうとした。でもその瞬間、陽野崎くんと目があってしまった。私だって気づかれた……何か言いたげな目をしているが何も言ってこない。

結局そのあと帰り母にもバレなかったが陽野崎くんの何か言いたげな目が頭から離れなかった。







翌日ー
昨日は眠れなかった。合わせる顔が正直ない。重い足取りで駅につくと陽野崎くんが改札にいた。
「日波、ちょっといいか?」
まさか駅で待ち伏せとは!断れない。
「大丈夫だよ。どうかした?」

「どーしたもこーしたもないだろ!昨日ライブハウスにいたよな!」

「おたくのドラムの子に来てくれって」
陽野崎くんは大きくため息をつく。
「あんのバカ…とりあえずバンドやってることは黙ってろ、誰にも言うなよ?」
圧がすごいです。陽野崎さん。
「別に言わないよ」

「あと、父親とのこともな」

「わかったよ」
こんなに念を押されて誰が言うか!
「あと、何で日波はいたの?親は知ってんの?」
言われるって思ってた。覚悟してました。