光は鈴の音とともに静かに消えれば辺りには再び静寂だけが戻った。
少女のいなくなった空間で、男はこらえきれない笑みでひとしきりに笑えば手に持つネックレスをみつめた。
「あはは、こりゃ傑作。まさかこんな簡単に零れ落ちるだなんて。…それで?次は何して遊ぼうか」
本来の薄暗さを取り戻した部屋の中で、男は耳にかかるタッセルピアスをゆらりと揺らせば向こう側に控える者へと振り向いた。さっきまではいなかったこの場所には一人の影が姿を現す。
「ふふ、にしても君も酷だよね~。あの子が鬼神君を思う気持ちに蓋をするだなんて。ま、とはいえ約束は約束だ。お望み通り、君らのお姫様は元の世界に戻してあげたんだ。文句の付けようないだろう?」
「ええ、お見事でしたよ。流石は仙狐の血といいますか、あの術も我らが使うには少々骨が折れる代物であるからして、力の根源を支える上では貴方の存在が必要不可欠でしたからね」
青年は両腕を後ろで組み合わせればニコリと笑った。
感情の読めないその笑みは不気味ながらも何処か洗礼されていた。
「気に入ってくれたかい?でも、ちょっと扱いが荒くはないかい?ただでさえ術家とのいざこざが終わったばかりなんだ。王家が絡めば逃れようもない。上手く弁明しに行く僕の気持ちも汲み取って貰いたいよ」
男は不満げな顔をすれば声を漏らす。
「おや、それはすまなかったね。なにぶんこっちの世界には疎いんだ」
青年は笑った姿勢を崩さぬままそんな男をみつめた。
「胡散臭い笑み。力のためなら神でさえも手駒にとる君らにはホント質が悪くで敵わないよ。ま、その人間に最初に惑わされたのは僕自身ではあるけど、、」
男はやれやれと首を横に振れば溜息をついた。
これ以上余計なことを言うつもりはないらしい。
「四柱、邪気への耐性はもってあと数年。これを機に両国に亀裂を招くのだけは避けたいところ、、君達にできるかい?」
「問題ないよ、全ては順調に進んでいる。このままいけば、じきにあの子の封印も解けるだろう。鬼神の記憶も再生される」
「記憶ね~。ふふ、そうなれば隠世は今まで通りにはいかなくなる。最悪の場合、妖はみんな妖魔に変貌するだろう」
そうなれば僕も死ぬのかな~などと吞気に語る姿を青年は遠目越しにみつめた。
所詮は隠世、妖も術師の力なくして生きることは難易。
人間側も最近では何かと勢力を拡大している。
面白半分に結界領域を見つけた者たちが誤って踏み込む隙を与えないかが心配ではあった。
「妖魔は人間さえ喰らえば結界からも出ることが容易。所詮は妖の為に造られたバリア、化け物相手に効くはずもない」
そうなった時、現世は更なる恐怖へと追い込まれる。
妖が人間を滅ぼす未来。
もう一度、あの時の記憶を蘇らせるわけにはいかない。
現世側が恐れているのはまさにこれに尽きた。
「僕が力を貸せるうちはいいけど僕だって妖だ。いつ君を裏切るかもしれない相手に、そう易々と気を抜きすぎやしないかい?」
「はは、心配してくれてるの?それは実に喜ばしいね~。でも安心して、君に僕は倒せないよ」
「…ほお」
「なんだってするさ、あの子を、それに現世を守るためならね」
そう言えば、青年は静かにスーッと消え始めていく。
「それじゃ、後のことは任せたよ。くれぐれも…ね?」
「はいはい、主君のおおせのままに。…これだから人間は嫌いだ」
「ふふ、じゃあね、狐野」
青年はいたずらな笑みで笑えば消えていなくなり、部屋には狐野だけが一人取り残された。
狐野はもう一度、自身の手に持つネックレスを見つめればニヤリと笑った。
「さ~て、鬼神君はどうでるだろうか。これはまた一悶着ありそうだな~」
少女のいなくなった空間で、男はこらえきれない笑みでひとしきりに笑えば手に持つネックレスをみつめた。
「あはは、こりゃ傑作。まさかこんな簡単に零れ落ちるだなんて。…それで?次は何して遊ぼうか」
本来の薄暗さを取り戻した部屋の中で、男は耳にかかるタッセルピアスをゆらりと揺らせば向こう側に控える者へと振り向いた。さっきまではいなかったこの場所には一人の影が姿を現す。
「ふふ、にしても君も酷だよね~。あの子が鬼神君を思う気持ちに蓋をするだなんて。ま、とはいえ約束は約束だ。お望み通り、君らのお姫様は元の世界に戻してあげたんだ。文句の付けようないだろう?」
「ええ、お見事でしたよ。流石は仙狐の血といいますか、あの術も我らが使うには少々骨が折れる代物であるからして、力の根源を支える上では貴方の存在が必要不可欠でしたからね」
青年は両腕を後ろで組み合わせればニコリと笑った。
感情の読めないその笑みは不気味ながらも何処か洗礼されていた。
「気に入ってくれたかい?でも、ちょっと扱いが荒くはないかい?ただでさえ術家とのいざこざが終わったばかりなんだ。王家が絡めば逃れようもない。上手く弁明しに行く僕の気持ちも汲み取って貰いたいよ」
男は不満げな顔をすれば声を漏らす。
「おや、それはすまなかったね。なにぶんこっちの世界には疎いんだ」
青年は笑った姿勢を崩さぬままそんな男をみつめた。
「胡散臭い笑み。力のためなら神でさえも手駒にとる君らにはホント質が悪くで敵わないよ。ま、その人間に最初に惑わされたのは僕自身ではあるけど、、」
男はやれやれと首を横に振れば溜息をついた。
これ以上余計なことを言うつもりはないらしい。
「四柱、邪気への耐性はもってあと数年。これを機に両国に亀裂を招くのだけは避けたいところ、、君達にできるかい?」
「問題ないよ、全ては順調に進んでいる。このままいけば、じきにあの子の封印も解けるだろう。鬼神の記憶も再生される」
「記憶ね~。ふふ、そうなれば隠世は今まで通りにはいかなくなる。最悪の場合、妖はみんな妖魔に変貌するだろう」
そうなれば僕も死ぬのかな~などと吞気に語る姿を青年は遠目越しにみつめた。
所詮は隠世、妖も術師の力なくして生きることは難易。
人間側も最近では何かと勢力を拡大している。
面白半分に結界領域を見つけた者たちが誤って踏み込む隙を与えないかが心配ではあった。
「妖魔は人間さえ喰らえば結界からも出ることが容易。所詮は妖の為に造られたバリア、化け物相手に効くはずもない」
そうなった時、現世は更なる恐怖へと追い込まれる。
妖が人間を滅ぼす未来。
もう一度、あの時の記憶を蘇らせるわけにはいかない。
現世側が恐れているのはまさにこれに尽きた。
「僕が力を貸せるうちはいいけど僕だって妖だ。いつ君を裏切るかもしれない相手に、そう易々と気を抜きすぎやしないかい?」
「はは、心配してくれてるの?それは実に喜ばしいね~。でも安心して、君に僕は倒せないよ」
「…ほお」
「なんだってするさ、あの子を、それに現世を守るためならね」
そう言えば、青年は静かにスーッと消え始めていく。
「それじゃ、後のことは任せたよ。くれぐれも…ね?」
「はいはい、主君のおおせのままに。…これだから人間は嫌いだ」
「ふふ、じゃあね、狐野」
青年はいたずらな笑みで笑えば消えていなくなり、部屋には狐野だけが一人取り残された。
狐野はもう一度、自身の手に持つネックレスを見つめればニヤリと笑った。
「さ~て、鬼神君はどうでるだろうか。これはまた一悶着ありそうだな~」