「……息苦しくねえの?」


彼女の腰まである茶色い髪が生ぬるい風に揺れた。

やっぱり彼女の灰色の瞳に僕の全てを見透かされているような気分になる。


何かが住み着いているような胸の不快感に視線を下に落とした。

出会ってばかりのやつに何が分かる? 僕の何が分かるっていうんだ。



グッと拳を作ると、ズボンのポケットに入れていたスマホが震え、カッと熱くなっていた顔は一気に冷える。


震える心臓を無視したまま、急いでスマホの画面を確認した。



「ごめん……、僕そろそろ帰らなきゃ」


「もう帰るのか? まだ話の途中だっていうのに」


「うん、ごめん。お母さんが心配してるから」


彼女は何か言いたげにしていたけど、僕はその場を離れた。


今日は終業式だけだから午前中には帰れるってお母さんに伝えていたのにもう12時を回ってる。

急いで家に帰らないと。