「魅夜ちゃん、その目どうしたの」
翌日、魅夜は陽翔に呼び止められた。
「…目?」
彼の目に煌々と映る魅夜の眼は、片目が緑っぽく変色して濁っていた。
「…なにこれ」
「………」
まるで『キャッツアイの比率が減ったようだ』と陽翔は息を呑む。
「…魅夜ちゃん。君、何か危ないことしてないよね?」
陽翔はあくまでふんわりと問う。
魅夜は少し黙考して、ゆるりと首を振った。
「なにか他に、昨日と変わったことは?」
「…無いみゃあ」
ホッとしたような複雑な表情を浮かべる陽翔を尻目に、ただ、と思い直す。


…なんか、寂しい。



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それから間も無くして、【鳥籠】について調べてはいけない域があることを察した。
「…さて、約束の時間だみゃあ」
今日も【手助け】を頼まれていた魅夜は、木の枝からひょいと飛び降りる。
お礼は酒と言っていたか。度数が強めで、甘いといいな。

不意に風が吹いた。
風向きに逆らって振り向くと、人影が見える。
風がおさまってからその人影に目を向ける。

「…はーさん」
「魅夜ちゃん」

面が揺れる。

「悪巧みしてないよね?」
「んにゃあ、くどいみゃ。出会い頭にそれは直球すぎるに」

また風が吹いた。

「君、何か危ないことしてないよね?」

ぶわ、と風に煽られて、フードごと面が取れた。
視線が交錯し、魅夜はスカポライトとキャッツアイの双眸をそっと閉じる。



「にゃーよ。」





燦々たる結末は、誰も望んでいないのだから。