二重人格。
その言葉を聞いた時に思い浮かぶのはどんな人だろうか。
例えば僕、黒崎二葉。先ほど述べた通り二重人格の高校1年生。
もう一人の人格は女性。友人曰く「笑顔が素敵なショートヘアの美形女子」とのこと。因みに僕が双葉になっている時は意識がない。記憶も残らないみたいだ。面倒臭いので双葉ちゃんと周りに呼ばせている。周りは鈍い奴が多いのか、双葉という少女が僕と同一人物ということに全く気がついていない。

そんな僕のことを好きな女子生徒、中谷悠花。
第一に笑顔が似合う。成績優秀、容姿端麗、運動も得意に加え、人に優しい。こんな好条件の美少女、好きにならない男はいないはずだ。______僕を除いて。
笑顔に胸が高鳴ることはある。話しかけられる度、噛みまくりの返事をかますし、体育の時少し、ほんの少しだけいやらしい目で見てしまうこともある。健全な男子高校生なのだ。仕方がない。
だが、双葉の方が中谷に対する愛が強いらしく、僕の中谷に対する恋情が薄れているみたいなのだ。
中谷は双葉のことを「仲のいい友達」だと思っているらしい。つまり、中谷が好きなのは僕であって双葉ではない。

今日もまた、僕は中谷と喋る。双葉が出てくるまで。
僕の意識がない間、双葉が中谷とどんなことをしているのか、何を喋っているのかはわからない。
けれど、できるなら。
僕は、僕として彼女と一緒にいたい。