さあ、とうとう来た2月14日バレンタインデー。もちろん、私のカバンの中にはお菓子が入っている。
 納得がいくまで作り続けた、ガトーショコラとスノーボール。あとは渡すだけだ。

 教室に踏み込むと、すぐに絵里ちゃんがやってきた。

「ハッピーバレンタイン!はい、チョコ。」
「ありがとう…!」

 動物の顔のクッキーだ。とっても可愛い。絵里ちゃんらしい。

「私も…これ、どうぞ。」
「あ!ガトーショコラ!ありがと〜!」

 よし、これで1人目クリア。このまま渡していこう。そうして私は、女子をまわった。


 そして、席につく。残りは翔くんに渡したいスノーボールのみ。
 なんて声をかけよう、そう思っているうちに翔くんが来てしまった。

「お、おはようっ!」
「おはよ。」

 声が上擦ったかもしれない。
 翔くんは何気ない顔でリュックを机の横にひっかける。
 さあ、勇気を出して!私!

「し、翔くん!」
「ん?」
「今日の放課後、空いてる?」
「うん。空いてる。」
「えっと…。放課後…屋上に来てほしくて…。」
「分かった。放課後な。」

 心臓がうるさい。翔くんの目を見れない。今絶対、顔赤い。
 でも、呼び出すことには成功した…!やったね私…!